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少年の秘密
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しおりを挟む崔本一架、十七歳。私立の男子校に通う高校二年生。
中学まで子役として芸能事務所に所属していたが、今は引退してごく普通の高校生活を送っている。
「一架、おはよ!」
「おはよう」
学校では基本真面目な優等生を演じ、大人しく過ごしている。
学校は好きでも嫌いでもない。常に成績上位の為テスト前は必ずクラスメイトに引っ張りだこだ。
頼りにされるのは素直に気持ちが良い。だから断ることもせず、優しい微笑みを貼り付けている。
「ごめん崔本、この問題がどうしても分かんないんだけど……」
「どれどれ……あぁ、これはここをこうして……」
教えて、それで喜んでくれるならいくらでも力になってやりたいぐらいだ。
「なるほど、サンキュー! やっぱお前すげーな!」
一生懸命なクラスメイトといると癒される、というか心が洗われる。
俺とは違って本当に純粋なんだな、と思う。
「勉強もスポーツもできて、クラス一面倒見がいい! 一架は最強のイケメンだよ!」
「ははっ、褒めすぎだよ。決して間違いではないけど」
そうそう、俺が子役のオーディションに合格したのも、この容姿と全くの無関係とは言いきれない。俺はどうも一部の人を惹き付けてしまう美貌の持ち主らしい。
「はぁ、イケメンで勉強もできるなんて不公平だよな。外でお前のことガン見してる女子とか見つけると、マジで羨ましいわ~」
「褒めすぎだね、間違いではないけど。……でも俺は俺で不安な時があるんだ。俺のルックスに嫉妬した男子諸君が襲って来ないかって」
「大丈夫だよ。お前ほど完璧な奴だと逆に手が出せないって」
「そうかな……。それならいいんだけど……」
学校に限らず、俺はどこを歩いても見られている。
それを自信過剰と呼ぶ友達もいれば、自意識過剰と呼ぶ友達もいる。一体どっちが正しいのか、俺には分からない。
「あ、崔本だ。今日も爽やかだなぁ」
「な。あそこだけマイナスイオン漂ってそう」
一歩廊下に出ると知らない生徒からもヒソヒソと囁かれるぐらいだから、決して俺が心配症なわけじゃないと思う。
「ウッ……!」
「崔本、大丈夫? 顔色悪いぞ。皆見てくるからか?」
「うん。でも俺が悪いんだ。俺が……美しすぎるから……」
「崔本……お前……キモ…………ッ」
こうして、俺の長い一日はようやく終わる。
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