ファナティック・フレンド

七賀ごふん

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◇誕生日

#6

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ワンホールのケーキはチョコとデコレーションを1ピースずつ食べた。どちらも甘過ぎず、チョコはブランデーをきかしていた為、満腹でもぺろっとたいらげてしまった。
准はフォークを置き、両手を合わせる。
 
「ごちそうさま。すごい美味かったよ。俺はお前の誕生日のときにこんな美味いケーキ作れないかもしれないけど」
「大丈夫ですよ。俺は准さんさえいればお腹いっぱいなんです」
「あ、あぁ……そう」
その表現はちょっと危うい気がするけど、有難く受け取っておこう。
あえて彼のテンションに合わせるなら、俺も……ケーキ以上に、彼の存在の方がずっと甘くて味わえるから。

席を立って、彼の手を引く。
明かりを点けずに、寝室に連れて行った。そして体重と共に、彼を下にしてベッドに倒れる。
 
「成哉。料理は作ってくれたけど、プレゼントは?」
「プレゼント! はい、しばしお待ちを……」

と言って起き上がろうとした彼を再び押し倒す。別に本気で強請ってるつもりじゃなかった。

今はベタなことがしたくてしょうがない。

「プレゼントは当然、お前だろ」

彼の手の甲に、音を立ててキスをした。
その途端成哉は火が出そうなほど真っ赤になった。本当に分かりやすくて、笑ってしまいそうになるのを必死で堪える。

「な、何か准さんらしくない……でも、わかりました。どうか俺をまるごと受け取ってください! 永久保存版として!」

よく分からない例えだけど、照れながら言ってるのが可愛いから許そう。

成哉がもう少し落ち着く時はくるんだろうか。ちょっと不思議に思うけど、大人しいとそれそれでつまらないから……やっぱり今のままでいいか。
何だかんだ言って、自分は彼のこの騒々しさが気に入ってるんだ。

「准さん? 黙っちゃって一体どうし……んっ」

不安そうに見上げる彼の口を強く塞いだ。シーツに手を付き、膝をつく。彼を潰さないようにだけ注意して、唇の熱を味わった。
たかが触れることが、どうしてこんなにも愛しいんだろう。
今思えば、やっとのことで触れられたから────だろうか。

「お前のこと、もらってもいい?」

准が耳元で囁くと、成哉は瞼を強く閉じて頷いた。一秒一秒、意識してないけど過ぎていく。

一日はたった二十四時間なのに、半日近く仕事で離れ離れ。それから睡眠時間を差し引いたら、一緒にいる時間の短さにため息が出る。

同じ家にいても恋しいなんて、我儘だろうか。






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