ファナティック・フレンド

七賀ごふん

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◇誕生日

#5

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「まぁまぁまぁ、改めてもう一回言わせてください。准さん、お誕生日おめでとうございます!」
「……ありがと!」

二人は同時にワインを飲んだ。
「すごいな、これローストビーフ?」
「はい。これだけは前から準備してたんです」
「お前ってほんと料理得意だよな。お、美味い」
空腹だったこともあり、味わいながらほとんど平らげてしまった。准は椅子に背を預けながら、満足気に手を合わせた。
「ご馳走さま。いや、ほんとご馳走だった。良い嫁さんもらって幸せだよ」
「よ、嫁」
「おう。いや?」
「いえ……良いです」
成哉は目を輝かせて頷く。妻より嫁の方が馴染むから不思議だ。しかし彼がその呼び名を気に入ってくれたことに安堵する。
こんな幸せな時間がこれからも続くといい。たまに胃もたれしそうだけど、怖いぐらいに満たされてる。

「准さん、ご飯が終わった後は何ですっけ? ……えぇ、仰るとおり。デザートです」

何も言ってないけど、成哉は冷蔵庫へ向かった。そして持ってきたのは、誕生日に定番のホールケーキ。だけど。
「チョコとデコレーション。……ふたつも作ったのか? 大変だったろ」
「えぇ。でも准さんが喜ぶ姿を見たくて。これもまたサプライズですから!」
「ありがと。俺、どっちも好きだから嬉しいよ」
「どっちも好きなんですか!」
「あ、あぁ。何で……?」
成哉が青い顔で叫んだ為、准は無意識に身構える。何かまずいことでも言ってしまったか。

「何でもありません。どっちもお好きなら、これから毎年ふたつとも用意しますよ」
「いや、ひとつでいいよ? 作るの大変だろ?」

心配して返したが、成哉は蒼白になりながら頷くだけだった。でもわりとすぐに持ち直して、ふたつのケーキにロウソクをさした。
「十四本ずつ、二つ合わせて二十八本。准さん、両方同時に消してくださいね」
二つのケーキに視線を向ける。どう考えても同時は無理なので、片方ずつ火を消した。
 
「わあー、これぞ二十八歳初めての消火活動! 乾杯! Congratulations!」
「恥ずかしいからやめろ、それ……」

成哉のはしゃぎっぷりは見てて恥ずかしいレベルだ。変わらず、自分のことのように大喜びしている。
まるで幼い子どもだ。呆れてしまう。
彼に合わせ、乗せられ、……自分まで子どもに返ってしまった気分だった。





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