ファナティック・フレンド

七賀ごふん

文字の大きさ
上 下
137 / 149
これからも

#4

しおりを挟む


霊園を出て出発した頃には、空はすっかり夜の闇に染まっていた。宿泊先のホテルへ向かい、寛いで食事をとる。つけっぱなしのテレビを横目に、准と涼は窓際でこれからの人生プランについて話し合った。

「准さん、あの部屋ペットOKでしたね。俺、犬を飼いたいです。毛がもふもふしてるタイプ。シーズーとかヨークシャーテリアとか!」
「いやいや、猫だろ。犬なら百歩譲ってハスキー。大体あんな毛虫みたいなの、毛を巻き散らかして大変じゃん」
「そんな酷くありませんよ、昔飼ってましたから。もこもこしてもふもふしてる犬は正義です」
「分かった分かった。でも要検討な」
「お願いしますね。俺も、猫も検討しておきますんで」

巻き起こる口論とは真逆に、二人は密着していた。恋人としての距離。成哉は、自身の頭を准の肩に乗せた。
「引っ越して、新しい仕事を覚えて。お互い、また忙しくなりそうですね」
「そうだな。今ぐらいだな、こんなのんびりしてられんのは」
だけどこの時間は、もう誰にも奪われたくない。
守り続けていこう。准は成哉の頭を撫で、窓の外を眺めた。
真っ暗な夜空が広がる。その先には、小さくも存在感を放っている光。

……あぁ。
駄目だ。
また、思い出してしまった。

「准さん?」
「成哉。星、見に行こうか」

准は窓の外を見つめたままだ。そんな彼に、成哉は瞬きを繰り返していたが……やがて、徐に立ち上がった。

「見に行こう。約束しただろ? あ、公園で飲んでた時にしたやつじゃなくて。十五年前に、この地で交わした約束の方を」
「准さん……」

握った掌に、また強く力が込められる。
「ありがとうございます。でもすいません。俺そっちはあんまり覚えてません」
「正直で何より。まぁ俺がスッキリしないから、行くぞ」
「えぇっ、今からですか!?」
准は立ち上がって上着を羽織る。目の前で驚いてる彼を無理やり立たせて、車のキーをとった。
「うん、今でなきゃ駄目だ。だって本当はもっと早く」
十五年なんて時を待たず。

「……お前に会いたかったんだから」

空で光るあれを、今見たい。

一秒だって待てない。もっと早くに会って、約束を果たしたかったから。
彼の手を引いて、とにかく走る。

逸る気持ちを抑えられない。早く、早く。時間を蹴って、外へ飛び出した。






しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

Promised Happiness

春夏
BL
【完結しました】 没入型ゲームの世界で知り合った理久(ティエラ)と海未(マール)。2人の想いの行方は…。 Rは13章から。※つけます。 このところ短期完結の話でしたが、この話はわりと長めになりました。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】

彩華
BL
 俺の名前は水野圭。年は25。 自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで) だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。 凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!  凄い! 店員もイケメン! と、実は穴場? な店を見つけたわけで。 (今度からこの店で弁当を買おう) 浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……? 「胃袋掴みたいなぁ」 その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。 ****** そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています お気軽にコメント頂けると嬉しいです ■表紙お借りしました

処理中です...