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答え合わせ
#13
しおりを挟む「気付いたら自分のものみたいに考えてた。傍にいるのが当たり前だったし、あいつが俺から去ってくなんてちっとも思わなかった。イカれてるな」
創は心底可笑しそうに、肩を揺らした。
「成哉が辛い想いをしたことを知ってたのに。……あの時、勝手に助けた気になってたんだ」
────あの時。創が涼を東京に誘った時のことだろう。そして、やり場のない怒りから彼に暴行を働いた。
全てが狂った最大の要因。涼が狂った要因でもある。創は分かっているはずだ。
一番最初に狂ったのは、他でもない彼自身だから。涼を追い出した後も、彼と連絡をとって縛り続けていた。
「軽蔑どころか、お前も正直怖いぐらいだろ。俺のこと」
狂ってたんだ。その一言で片付けたくない出来事だけど。
「痛っ!!」
とりあえず、もう一回だけ創を平手打ちした。
「あぁ、そうだ。軽蔑したし幻滅したし、涼にした事は一生許さないよ。……でも怖くはない。お前は完璧だと思ってたけど、強がって虚勢張ってるだけのアホだってことが分かったし」
これこそ、今まで溜め込んできた僻みの集大成のような台詞だった。たった一つ違いの、完璧な弟に対する僻み。……そして、憐れみ。
ここまで心がすれ違ってしまった理由は、誰のせいでもない。自分達は人間だ。心の赴くまま行動する生き物だ。
動き続ければすれ違うのは当然のことだ。ただ、彼は歩く道を間違えた。
「許さない。けど、自虐的になんのも許さない。一生反省しろ。っていうのが絶対伝えときたい俺の気持ちで」
准は創の胸を押した。とても弱い力だったのに、彼は簡単に後ろに数歩下がり、壁にぶつかった。
まだ、そんな彼を心配している自分がいる。でもそれも……もう、やめよう。
「幸せになってほしい」
もう俺達は、弱いだけじゃいられないから。
「って、涼が言ってたよ。……創」
これからはちゃんと、自分の人生を歩むんだ。
創は何も言わなかったが、壁に背を預け、ずり落ちるように床に座った。
「涼がもういいって言ってるのに、俺がこれ以上どうこう口出すわけにもいかないからさ。……お前も、分かってやれよ」
もう終わりにしよう。不安も恐怖も、一度手放して。
「今さらだけど、十五年って長過ぎるよな。俺達、あの頃から……随分変わった」
窓から差し込む光が本当に眩しくて、目を細める。
未だ俯く彼の膝上には、いくつもの雫が落ちていた。
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