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10+10=青年
#16
しおりを挟む彼は、そう。
木間塚……准さん。
『……え? 俺のこと知ってんの?』
厳密に言うと十五年ぶりに会った彼は元気そうで。嬉しいのと、複雑な気持ちだった。
やはり名乗っても自分のことを思い出す素振りはなかった。でも、バレたらそれはそれで困るから構わない。
大体創のことを話して……それで、どうなる。
従兄弟を差し置いて、赤の他人の自分を信じてもらえる可能性なんてまずない。
黙ってよう。俺はただ、この人に一度会いたかっただけだ。
まだ五歳だったあの夜から、二十歳になった自分。そんなの彼じゃなくても、誰にも分かるわけがないんだ。
しょうがない。俺だって見事に忘れてたんだ。
准さん。
心の中で何回も呼んでみる。
それだけで、凍えそうだった心が一瞬で温まった。確信したのは、やっぱりメチャクチャ会いたかったんだってこと。……俺に本物の星を見せてくれた、この男の人に。
それでも本当はすごく怖かった。
拒絶されることもそうだし、傷つけてしまうかもしれないことも。
会ってもきっと素直に喜べないこと。
彼を憎んでること。……これから、憎まれること。
怖くてしょうがないけど……心がずっと求めていた。
貴方を。
『俺……っ』
創さんの為に会いに行ったんじゃない。
俺は自分の為に、准さんに会いに行った。
俺の事を知ってほしくて、欲を言えば思い出してほしくて。彼と出会い、創さんを思い出して、また強く思った。
准さんの恋人作りを邪魔する?
冗談じゃない。そんなことして何になる。
准さんは創さんの“物”じゃない。好きな人と、好きなように生きる権利がある。だから、
『准さんが……恋人を作れるように、俺がサポートします』
貴方の恋を応援したい。
いつまでできるのか分からない。創さんにバレたら半殺しじゃ済まない気がするけど。
力になりたい。もちろん、本当に役に立てるかどうかは別として。
この想いが少しでも伝わったなら、どんな目に合っても、どんな罰を受けてもいい。
それでもやっぱり、貴方の味方だから。
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