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10+10=青年

#15

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俺にはもうお前しかいないんだから。

そんな言葉が降り掛かったけど、咄嗟に耳を塞いだ。

気付けば着の身着のまま、創の家から追い出されていた。いや、むしら逃げたと言ってもいい。

後ろがじくじくする。寝違えた時のように首が痛む。寒い。熱い。気持ち悪い。
まるで迷子のよう。自分が今立たされてる状況が分からなくて、夜空を見上げた。

星。星が……ない。
しかし創の“お願い”は、何とか鼓膜に張り付いていた。

准さんが恋人を作らないように見張ってろ……って……。
無理だろ。普通に考えて。

准は自分を知らない。家に行っても門前払いか、下手したら警察沙汰だ。笑うしかない。
「……はぁ」
……笑えない。ため息しか零れなかった。無理なんだ。彼が自分のことを覚えてる可能性はゼロに近いんだから、「誰だお前」で終了だ。
予定よりも先に追い出されるとは思わなかった。尻ポケットに財布だけはあるものの、荷物を取りに戻るのも怖い。これからどうしたら良いんだろう。

身体も心も痛い。気持ち悪い。それなのに頼れる人もいない、味方がいない。俺はやばい。
夜の繁華街は歩くのが億劫になるほど人で溢れかえっているのに、俺が住んでた町より狭く、寂しく感じる。
正直泣きたい。……泣かないけど。
とりあえず一刻も早く身体を何とかしたくて、適当にネットカフェに行ってシャワーだけ浴びた。
そしてあてもなく街を歩き、時間を潰す為にひとり店で飲んで……そこからは記憶が曖昧だ。

フラフラ、フラフラと馬鹿みたいに。今の俺を両親が見たら何て言うだろう。「ほんと、馬鹿みたいだ」って叱ってくれるだろうか。
でも、もう叱ってすらくれない。どうしようもなく独りだった。

「…………」

分かっていた。本当は会うべきじゃないと。
それでも、脚はある人の場所に向かっていた。

創さんの為にも自分の為にも、……何より、“彼”の為にも。俺なんかがこれ以上関わった所で何かが変わるとは思えないし、誰も彼も傷つける結果になるかもしれない。
それに何より、嫌いなんだ。もう皆。自分も、創さんも、こんなこと知りもせずに暮らしてる准さんも。
見事な逆恨みだ。それでも嫌い。
嫌い……だけど。

会いたい。

一度でいい。その僅かな想いが、あの人のマンションまで突き動かした。廊下でひたすら待って……でも眠くなって寝てしまって。

『おーい。こんなとこで寝たら凍死するよ?』

光と共に視界を覆う。目覚めたと同時に、彼と顔を合わせた。






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