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10+10=青年
#9
しおりを挟むこの空白の時間が不思議と好きだ。墓参りが好きと言ったら不謹慎かもしれないが、例えここに彼らが眠ってないとしても、心が温かくなる。だからずっと通い続けた。
そんなある日、涼は“彼”と再会する。皮肉にも、両親が好きだった美術館。偶然行った、東京で。
「……成哉君!?」
「え?」
展示されている絵画を仰ぎ見ていた涼が振り返ると、そこにはいつぶりか分からない創が居た。また少し大人びた気がする。もう大学も卒業して、立派な会社員だからかもしれない。
「もしかして、創さん……!? お久しぶりです、すごい偶然ですね!」
「本当、久しぶり! 正直君かどうか自信なかったんだけど……良かった。ここにいるなんて、もしかして引っ越してきたの?」
「あ……いえ。今日はたまたま、遊びに」
「遊びに? って、一人で?」
頷き、ゆっくり話せる場所へ移動した。吹き抜けた気持ちの良いテラスで、二人はベンチに座る。
「ほんっ……とに懐かしいなぁー。そういえばお父さんとお母さんは元気?」
創は笑顔で涼に尋ねた。どうやら、彼は知らないらしい。木間塚がわざと伝えなかった可能性もある。ならここで話すのは良いのか……迷ってしまい、少しの間が空いた。それだけで、創は違和感を感じ取った。
「どうしたの? ……もしかして何かあった?」
「あ、いや……」
何も無いと否定したかった。しかし真っ直ぐに自分を見据える瞳と、両親の面影がこんなところで重なってしまった。
「俺で良かったらいくらでも相談に乗るから、言って。……力になるから」
優しい、魅惑的な言葉に絆されたんだと思う。涼は両親のことを全て話した。時々感極まって危ない場面もあったが、何とか話し終え、この美術館に来たことを伝えた。ここには、両親が一等好きだった睡蓮の絵があるのだ。
それが見れて良かった、と。すると、何故か創の方が泣いていた。
「創さん? だ、大丈夫ですか!?」
「……ごめん、大丈夫。それよりごめん。君がそんな辛い思いしてたのに、全然知らないで」
「何言ってるんですか。俺のことだし、創さんが謝ることなんか何もありませんよ!」
意外と涙腺が脆い方みたいだ。少しして、落ち着いた創は目元を擦る。
「二人とも、君が優しい子に育ってくれて嬉しかっただろうね。こんな風に、自分達が好きだった物を見に来てくれたりさ……絶対、誇りに思ってるよ」
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