ファナティック・フレンド

七賀ごふん

文字の大きさ
上 下
96 / 149
First and last

#8

しおりを挟む


「創じゃなくて、お前の本当の気持ちを知りたい。だからまた会わなきゃいけなかったんだ。俺はまだ、お前のことを全然知らない!」

張り叫んだ喉と、握りすぎた拳が痛い。それでも、准は想いを打ち明けた。
「疑いたくない気持ちがあったよ。創のことも……それで痛い目に合った。でもさ……」
視界がぼやけ、霞む。自分が今どんな顔をしているのかもわからない。

涼は静かに聴いていた。こんな時ですら、ちょっと笑ってるんだから腹が立つ。
でも。いつも笑顔なのに、いつも寂しそうに見えるんだ。……彼は。
「やっぱり、お前を信じたい。何で、って聴き出したい部分も勿論あるけど。それ以上に、こんな形で別れるのは嫌なんだよ……!」
一緒にいた時間は短くても、それはかけがえのない、宝物のような日々だった。

「全部仕組まれて、作られたものだって分かっていても楽しかった。……お前といた毎日は、ひとりだった時とは全然違うんだ」

────手が触れている。

「何で」

涼は顔を隠すように、横へ向いた。

目眩がする。彼に押し倒されて、頭を打ち付けたせいだろうか?
目元を強く擦る。頭痛や吐き気も一緒にやってきたが、それは多分さっきのジェットコースターのせいで。
「何でそんな……」
胸が熱くて仕方ないのは、……目の前にいるこの青年のせいだ。

「そんなこと言ってくれるんですか? やっぱり、准さんもちょっとおかしいでしょ……っ」
「悪かったな。さすがにもう自覚あるよ」

風が吹いている。ゴンドラを揺らして、すきま風が冷たかった。あぁ……。

涼は瞼を伏せた。

……狂ってる。

誰も彼も、どうしてそんな熱狂的に。

誰かに執着するんだろう。

「准さん」

俺にはちょっと、分からないけど。
「俺……ほんとはずっと、貴方に会いたかった」
「そっか。……俺もだ」
かじかんだ掌を握られる。痛みと緊張が同時にとけていく温かさだった。

……俺“も”?
准の言葉に違和感を覚えながら、涼は必死に感情を殺した。
出来ることなら逃げ出したい。
でも無理だ。なんせ今自分がいるのは地上百メートル。
眩しすぎるライトがつらい。
あの日と同じ……本当に、目眩がしそうな夜だった。





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】

彩華
BL
 俺の名前は水野圭。年は25。 自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで) だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。 凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!  凄い! 店員もイケメン! と、実は穴場? な店を見つけたわけで。 (今度からこの店で弁当を買おう) 浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……? 「胃袋掴みたいなぁ」 その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。 ****** そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています お気軽にコメント頂けると嬉しいです ■表紙お借りしました

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...