ファナティック・フレンド

七賀ごふん

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First and last

#6

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「准、さん……?」

ペットボトルが床に転がり落ちる。しかしそんな事は気にも留めず、准は唇を噛んだ。

「お前の言う恋人って誰のことだよ。加東さん? ……それとも、創のことか」

彼が起き上がれないよう、肩を押さえる手に力を入れた。狭いゴンドラの中ではかなり厳しい体勢だったが、馬乗りになって依然話を続ける。

……だめだ。
やっぱり、平常心なんて無理だった。
「創は俺に恋人を作ってほしくなかった。だから見張り役として、お前を俺の家によこした。俺への好意も、同性愛者であることも知られたくなかったから。……そうだろ」
誰も入ってこれない空間で二人きり。なのにどんどん上へと昇っていく。
もう外を眺める余裕はないが、反射する七色の光がかろうじて自分達の今いる場所を教えてくれていた。

こんな楽しい場所で、楽しい時間で、ドロドロした話をしようとしている自分は最低だ。だけど、もう我慢できない。
今回のこと……何から何まで、「ハイそうですか」と笑って頷くことなんてできなかった。
「俺は本当救いようのない鈍感だけど……分かんないなりにあいつの気持ちを考えたんだ。好きな人を手に入れたい気持ちや、……手に入れるのに邪魔な人を嫌う気持ちを」
不安と恐怖の入り交じった瞳で自分を見上げる彼の、本当の気持ちを聴き出さないと。終わるに終われない。

「わかるよ。きっと誰だって思う、当たり前の気持ちだ。当たり前……だからこそ、自分を強く持って抑えなきゃいけなかったんだよ」

不意に、押さえていた腕を握られた。強いぐらいの力で、やっぱり“あの時”と同じで、痛かった。

「お前の言う通り、俺は創のことを何もわかってなかったよ。理解してる気になってたけど、実際は理解しようとすらしてなかった。恋愛を邪魔されていたとしても、逃げ続けた結果がこれなら誰も責められない。創も、……お前も」

やたら一秒一秒が長い。時間が経つのが遅く感じる。
「……准さん」
そんな中で、涼はようやく重い口を開いた。

「創さんは、本当に貴方のことが好きだったんです。でもやり方を間違えて、気持ちだけ暴走した。貴方のために女性と婚約までしたけど……やっぱり、貴方が自分以外の誰かと幸せになるのが耐えられなかったんです」




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