ファナティック・フレンド

七賀ごふん

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嘘吐き

#9

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俺は今どうなっているんだろう。
意識だけが奈落の底に落ちてくような感覚に陥った。
どこかへ向かってる。いや、どこかへ戻っている。


ここは……。


瞼を開く。時間は分からないが闇に包まれた夜だった。
暗がりの中、ただ脚を動かして坂を登り、上を目指している。
でも寒い。すごく、寒い────。

「寒い!! 寒すぎ……っ! やっぱ帰ろうぜ、風邪ひく!!」
「うっ……るさいなぁ! 冬の星が見たいって、准が言ったんだろ!? それで俺らも夜中まで寝ないで、こっそり出てきたのに!」

声の方を向くと、まだ小学生の創が怒鳴り返してきた。
……何だろう。何か変な感じ。
でも違和感の正体は分からなかった。

てか寒っ。
なんたって、昼と夜でこんなにも気温差があるのか。しかも上に行くほど寒い気がしてきたし。……あぁ、家に帰りたい。俺はその場に留まり地団駄を踏みそうな勢いで愚痴を零した。
「もー、こんな寒いなんて思わなかったんだよ! ほんと失敗した……せめて俺だけでももっと服着てくりゃ良かった」
小学生の俺は、ひたすらやり場のない不満をぶちまけている。
「はぁ……聞いた? 一番歳上なのにサイテーだよな、この人」
創は俺を指さし、手を繋いでいる隣の男の子に話しかけた。
眠そうに目を擦っている、まだ幼い男の子に。

「でも、星見たい……」
「……」
「……」

俺と創は交互に顔を見合わせる。そして黙って頂上を目指した。その子が頑張ってるから、歳上の俺達が頑張らないわけにはいかない。使命感というよりは義務感に突き動かされ、鬱蒼とした山の中を歩いた。

冬休み、田舎のおじいちゃん家の近くで。

街灯もない、地図もない、ぶっちゃけここがどこかも分かってない────真夜中の坂。
ただ、上へ向かって歩いていた。




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