81 / 149
嘘吐き
#4
しおりを挟む逃げ続けたツケがようやくやってきたのかもしれない。
今は崖っぷちに立たされている。落ちても死ぬことはない。ただ、大事なものは全て零しそうだ。
「准、成哉との生活はどうだった? こいつちょっと頭悪いけど、面白いとこに気が付くし暇はしなかったろ」
凍えそうな寒さの中、准と創は廊下に佇む。
「……」
涼も靴を履き、ドアを閉めて完全に家から出る。
この状況は一体何なのか。叶うのなら、今すぐにでも終わってほしい。
「で……何がしたいんだ。……お前ら」
お前ら、と言っても、殆ど涼に向けて質問していた。
涼もそれを感じ取っている。だが目を合わせようとしない。喋らない彼に代わって、創が口を開いた。
「何が……って言われると困るけど。俺が結婚したらお前が寂しい想いをすると思って、成哉を貸してやったんだよ。どこの誰かも分かんない奴と同居されるよりマシだからさ」
そこまで聴いて、また創の方に向き直る。彼は悪びれる様子もなく、こちらへ歩き出した。
「それもかなり急だったから、成哉には悪いことをしたと思ってる。お前に変な虫がつかないように見張ってもらってたんだ。期間までは決めてなかったけど。なぁ、ここまで言えばさすがに分かるだろ」
白い息が闇にとけこむ。鼻先が触れそうな距離で、彼は囁いた。
「俺はお前が好きだ。お前を誰にもとられたくない。手に入らないなら尚さら」
動揺するな、と言われても無理。
今さら冗談だと笑い飛ばされても、絶対に笑えないような告白をされた。
さっきまでは理解できない現状に腸煮えくり返ってたのに、今はどうしたらいいか分からず動けなかった。
「俺もお前と同じ同性愛者だってこと。そして、お前のことがずっと好きだったこと……どっちも、全然気付かなかっただろ。お前の鈍感さは昔から神がかってたからな」
創は苦しげに笑いながら、頬に触れてきた。
「だから本当に大変だったよ。お前に近付く奴みんな引き剥がして、俺しか見えないようにしてやろうとしてた……けど、お前はいつまで経っても変わらなかった」
「……何で……っ」
全てが衝撃的だし、予想外の展開過ぎてどもる事しかできない。……自分が情けない。
創が俺を好き? いやいや、そんな馬鹿な。
でも────隠されたら分からない。
隠されたから見抜けなかった? ずっと一緒にいた……のに。
それで気付かないなんて、彼の言うとおりどこまで鈍感なのか。どうしようもない歯痒さに支配される。
0
お気に入りに追加
15
あなたにおすすめの小説
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】
彩華
BL
俺の名前は水野圭。年は25。
自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで)
だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。
凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!
凄い! 店員もイケメン!
と、実は穴場? な店を見つけたわけで。
(今度からこの店で弁当を買おう)
浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……?
「胃袋掴みたいなぁ」
その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。
******
そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています
お気軽にコメント頂けると嬉しいです
■表紙お借りしました

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる