ファナティック・フレンド

七賀ごふん

文字の大きさ
上 下
77 / 149
ひび割れ

#12

しおりを挟む


「俺と玲那は同じなんだよ。性別こそ違うけど、互いに互いの苦しみが分かる。傷を舐め合うことができる存在なんだ」

金縛りにあったみたいに、身体が動かなかった。
今は声も出なかった。まさかとは思うが……ひとつの嫌な推測が頭に浮かんでしまったから。
そんな俺を見据えて、創は薄ら笑いを浮かべている。そして、俺の頬に触れた。

「愛がないから結婚すんだよ。それならお互いのやることに文句ないもんな。……俺が男と付き合っても、あいつが女と付き合っても」
「……は?」
今……何て?

聞き間違いであってほしかった。
いやもう、今日起きたこと全て。
でもこれが現実で。容赦なく叩きつけられた気がした。
俺は本当に、何も知らなかった。それを思い知らされる。創の眼は、冷たくてしょうがない。

「准。全部お前の為なんだ」

彼はゆっくりドアノブを回した。
部屋のドアが開く。その奥で揺れる一人の人影。
「……涼?」
いつものように、玄関先まで出迎えてくれるそいつも。
変わらない。……変わらないけど。

「おかえりなさい、准さん」

そういえば、ひどく冷たい嘘をつく。
ドアの先で佇んでいた涼は、感情の無い瞳で俺を見て、それから創の隣へ歩いた。
「お久しぶりです、創さん」
「あぁ。約束どおり働いてくれてありがとな。
やっぱお前は良い子だよ。……成哉」
これは全部、歪な部品で繋ぎ合わせたものなんだ。偶然なんかじゃない、人の手で仕組まれたもの。混乱しながらも、目の前に佇む二人を見た時に確信した。

思った通り、現実は言葉にできない痛みを伴った。
知りたくない。知ったら全て終わる。……その考えは間違ってなかった。

「准、本当のこと知りたいんだろ? 気が変わったから、やっぱり本当のことを話す」

一体全体、何を考えてんだ。
何がしたいんだ。
……こいつらは。
そればかりで何も言えない。俺を見越して、創は涼の耳元に優しく囁いた。

「教えてやんなよ、成哉。お前は誰の物で……何をしに、ここへ来たのか」





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】

彩華
BL
 俺の名前は水野圭。年は25。 自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで) だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。 凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!  凄い! 店員もイケメン! と、実は穴場? な店を見つけたわけで。 (今度からこの店で弁当を買おう) 浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……? 「胃袋掴みたいなぁ」 その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。 ****** そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています お気軽にコメント頂けると嬉しいです ■表紙お借りしました

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...