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ひび割れ
#6
しおりを挟むなにかあれば、躊躇わずに頼ってほしい。それこそいつでも話せる距離にいるんだから。
遠慮なんて知らなかった子どもの頃のように。……いつでも力になる。
「ごめん涼、やっぱり忘れてくれ。あんま誰かにベラベラ話す内容じゃなかった」
「…………」
自分から切り出したものの、准は話を強制終了して紅茶を飲んだ。でもやけに静かだ。不審に思って涼の方を見る。
「涼? ……どうした?」
問い掛けたが反応がない。彼はなにかを見つめていた。
涼が向けている視線の先にあったのは、……俺のスマホ。
画面が独特な色で光ってるから、着信が来てるんだとすぐに気付いた。音が鳴らないのは、マナーモードにしている為。
「わるいな、ちょっと待って。電話きてるみたい」
一応彼に声を掛け、スマホを手にとる。そして画面に表示されてる名前を確認した。
創からだった。
「もしもし?」
涼のことが気になったものの、無視する理由もないので電話に出た。
[准? よっ、おつかれ]
聴き慣れた、明るい声が返ってきた。
「おつかれ。どうした、電話かけてくるなんて珍しいな」
いつも職場で会うし、本当に用がある時はメッセージのみ送って家に来るし。
[あぁ、ちょっとな。……准、今日玲那と何か話した?]
「話した、けど。……何で?」
内心ドキッとしたが、動揺を悟られないよう淡々と返した。すると、彼はゆっくり言葉を繋いでひとつの提案をしてきた。
[……そっか。まぁいいや、ちょっと話したいことがあんだ。今から、お前ん家に行ってもいい?]
「あぁ、いいけど」
一体何の話だろう。
分からないが、妥当なのはは玲那……婚約の件だろう。
「まだ会社なのか? それなら迎えに行くよ」
[あぁ、残業してた。でも悪いから大丈夫だよ]
「いいよ、どうせまだ着替えてないし。ちょっと待ってろ」
一度は脱いだジャケットをまた羽織り、車のキーをポケットに仕舞う。
「涼、ごめん。ちょっと外出てくる」
後ろで静かに座る彼に声を掛けると、電話の先から低い声が聞こえた。
[……准、家に誰かいるの?]
創の方にも聞こえてしまったみたいだ。
「あ、あぁ。友達がいるんだけど大丈夫?」
何故か、妙な違和感を覚えた。いつもの創の声のはずなのに……やけに鼓膜に突き刺さる。
[へぇ、……友達ね。せっかくだし、会いたいから是非そこに居てもらってよ]
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