ファナティック・フレンド

七賀ごふん

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迷路の手前

#6

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三十分後、准は自宅に安着した。ひとりではなく、後ろにもうもうひとり控えている。成り行きとはいえ、とうとう加東を家に呼ぶことができた。

というものの、それほど緊張はしていない。
嬉しいか? と訊かれるとそうでもない。

気になる人を家に連れてきたのに、何故だろう。酷く落ち着いている。自分自身よく分からなくて、不思議な気分だった。

「お、おかえりなさ……って、…あの……」

そして玄関まで出迎えたは良いものの、目の前で立ち尽くす彼。
涼は、加東を見て後ずさった。
確か男の姿で会うのは今回が初めてのはず。案の定、困惑していた。
「初めまして、加東といいます。こんな時間にお邪魔してすみません」
「い、いえいえ! どうも、……初めまして」
涼はこれ以上なく挙動不審になりながら、頭を下げた。頑として彼と目を合わせようとしない。しかし加東は特に気にせず、笑顔で准に問い掛ける。
「いやー、俺てっきり准君は一人暮らしだと思ってたよ。彼はお友達?」
「え。えっと……」
まぁ、友達と言えば友達なのか。
他に例えられる関係もないから紹介のしようもない。友達にすることに決めた。

「はい、友達の涼です。涼……あれ、下の名前何だっけ?」
「えーっと、あれ、何でしたっけ。俺も自分の名前忘れちゃいました、ハハハ」
「何なの君達……」

このやり取りのせいで、加東に不審感を抱かせたのは言うまでもなかった。
以前、女装した涼は加東に“涼子”と名乗っている。涼の下の名前は、確か……成哉。別に名前を言っても問題無いはずなのに、彼は最後まで名前を明かさずにいた。

「准さん! 何で連絡してくれなかったんですか、あの人を連れてくるって!!」

リビングで加東にくつろいで貰ってる間、准はキッチンでお茶を準備をした。……そこへ、涼が小声で問い詰めてくる。
「悪い、ずいぶんと急だったからさ……。それよりせっかくだ。今回はお前も男としてちょっと話そうぜ。きっと仲良くなれるよ」
「俺は結構です! カンケーありません!  男の園に巻き込まないでください!」
「男の園って何!?」
涼の敵意剥き出しの様子に改めてため息をついた。

「加東さんは良い人だよ。心配しなくても大丈夫だから話してこいって」
「ハハハ……何を話せと? 全身全霊お断りします」
「何でそんな嫌がんだよ。何が不満なんだ?」
「不満とかじゃなくて! 准さんこそ、一体何がしたいんですか?」




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