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迷路の手前
#5
しおりを挟む准は喉まで出かかったため息をワインで押し込んだ。
酷く気まずい。
加東さんは当たり障りのない笑顔を浮かべてるけど、絶対何かを感じ取ってる。それもそのはず、創も玲那も先程から笑ってない。むしろ真顔だ。
息が詰まるとまでは言わないけど、不安になってくる。まるで自分だけこの場を理解してないような、取り残されたような気分に陥った。
手を拭いて、胃もたれしそうな感覚をグッと堪える。
「……まっ、もし話せそうなら教えてね、准君。私は全力で応援するからさ!」
「あぁ。ありがとう」
玲那が明るく言ったことで、ようやくこの場の嫌な空気が払拭された。
助かった。
これでやっと、涼の待つ家に帰れる。食事が終わりレストランを出て、准は安心していた。
創も玲那も加東も、みんなそれぞれ誰かに電話を掛けていたから、少し待って。
それが終わったら別れの挨拶をしようと思っていた。しかしその後、非常に残酷な選択を迫られることになる。
「話があるんだけど」
そう、三人が声を揃えて准に言ったからだ。
しかもタイミング良く全員ハモった。こんなところで謎の協力プレイを見せてくるなんて、実は事前に打ち合わせとかしてないよな、
「き、聴きますけど……じゃあ、一人ずつどうぞ」
こっちはこっちで混乱して、そんなことを口走る。しかし、創はすぐに片手を翳した。
「ごめん、俺は今度でいいや。考えてみたらいつでも会えるし。じゃあ加東さん、今日はありがとうございました。玲那は?」
「あ……うん、私も今日は帰るね。加東さん、准君、また飲みに行きましょう。おやすみなさい!」
准に……というより、加東に遠慮して、創と玲那は先に帰ってしまった。だから残ったのはもちろん、
「どうすっかな……俺も、今日はやめとこうか」
加東さんだ。彼も少し困った顔をしている。准は、それが気になって仕方なかった。
「待ってください、加東さん。相談なら聴きますよ! この前、俺の相談に乗ってもらいましたし」
元々彼としていた約束も、さっきの空気や表情も気になっていたから、逸る鼓動を抑えて手を差し出した。
彼の話は今日聴いた方が良い。何となく、そんな焦りがあった。後回しにしてはいけないと警鐘が鳴っている。
その理由を知りたい。だから、
「俺の家で良ければ……飲み直しませんか?」
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