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迷路の手前
#3
しおりを挟む「なーるほど。それで、二人も来ることになったんだ」
「すみません……」
その日の夜、仕事が終わった准は加東と待ち合わせて近くのホテル内のレストランに入った。少し離れた後ろに、創と玲那もいる。
「いや、別に謝る必要はないんだけどさ。俺が今日約束したのは、彼らの事で……その二人を連れてきたからビックリしたんだよ」
「えっ?」
一体どういうことだろう。聞き返そうとしたが、その前に席へ誘導されたので四人揃ってしまい、タイミングを逃した。
加東さんがしたかった話とは何だろう。やはり二人を連れてきちゃまずかったんだろうか。
心配になりながらも、久しぶりの席ということで和やかに乾杯した。
「創君とはたまに会うけど、玲那さんは本当に久しぶりだね。元気だった?」
「はい、元気過ぎて困ってますよ。加東さんは?」
「俺は変わんないかなぁ」
加東さんと玲那はほんわかした空気で再会を喜んでいる。その間、創は黙々と食事しながら玲那を横目に見ていた。
彼女達が話に夢中になってる隙に、隣に座る創に耳打ちする。
「なぁ、創。玲那……霧山と、上手くやってるんだよな?」
「あぁ。上手くっていうか、普通にやってるよ?」
そう言う彼のテンションは低く、あまり楽しそうには見えない。
……その理由は分からなくもない。この婚約自体、親にすすめられたものだからだ。
玲那の父が創の父、つまりは准の叔父と友人で、その縁で結婚の話を持ち掛けたんだとか。皆ウチの会社と繋がりがあるから、俺達三人が出会ったのは必然とも言える。
親の持ってきた縁談。今どき珍しいけど、創と玲那は学生時代からの関係。相性は誰から見ても良さそうで、楽しそうだった。さらには二人とも同意の上で婚約したから不満はないはずだ。
いまいち居心地の良くない席で、次々に運ばれる料理を口にする。味は美味しいのに、上手く飲み込めなかった。
「玲那さん、このたびは本当におめでとうございます。気が早いけど、早く晴れ姿が見たいなぁ」
「あはは、そんな。ありがとうございます」
加東の祝福の言葉に玲那は軽く頭を下げた。しかし、徐ろに上げた顔は暗かった。心なしか、創の表情も暗く見える。
やっぱり変だ。
この二人の変化なら、自分は嫌でもわかる。釈然としないなにかを感じてると、不意に玲那が身を乗り出した。
「そうだ! ねぇ、それで准君は彼女できたの?」
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