ファナティック・フレンド

七賀ごふん

文字の大きさ
上 下
44 / 149
本音の寝室

#7

しおりを挟む


涼は困った顔で、空いたベッドと准の顔を交互に見た。
「うーん、迷います。それはセーフなんですかね。ギリギリアウトだったら、俺殺されます」
「誰にだよ。お前ってほんと変なこと言うよな」
「ま、まぁ……お気持ちは嬉しいんですけど、やっぱりそれは……前から申し上げてるように、准さんはもっと警戒心を持たなきゃだめですよ」
そう言いながら、涼は自分の首元を抑えた。多分、また何か色々考えてるんだろう。

「俺をあまり信用しないでください。俺は貴方が思ってるような人間じゃない」
「はいはい、分かったから。一緒に寝るの? 寝ないの?」
「寝ます!!」

あれほど迷う素振りを見せていたくせに、いざ尋ねるとかなり元気な声が返ってきた。この即断の違いは何なのか。
「じゃ、早く寝ようぜ。あともう三時間しか寝れないよ、俺」
ということで、涼を半ば強制的に横にし、准は彼に枕替わりのクッションをひとつ手渡した。同じ布団に包まってる。限りなく近い距離で、温もりを感じた。
「ん……」
ちょっとでも動いたら振動が伝わってしまう。呼吸だって聞こえる。下手したら心臓の音さえ聴こえるような気がしているのは……飲み過ぎたせいだ、きっと。
ふと横を見ると、涼も目を開けて何故かカチンコチンになっていた。微動だにしないから、逆に違和感だ。
「……眠れない? お前さっきまで寝てたもんな」
「あっ……いえ、あと六百秒ぐらいじっとしてれば寝れると思います!」
十分か。何か分からないけど緊張してんな。
「准さんこそ、疲れてるでしょう。寝ないんですか?」
涼はこっちに寝返りを打つ。すると真正面に向き合って、顔がすごい近くにある。こんな風に誰かと寄り添うのはいつぶりかな。
「ふあー、もちろん、気ぃ抜いたら一瞬で寝れるよ。……でも」
布団から片手を出して、彼の柔い頬に触れる。
「ちょっと思い出してさ。お前、さっき泣いてただろ」
「え、はい……」
「今は大丈夫?」
気付けば、まるで子どもをあやすように涼の頭を撫でていた。深い意味なんてないけれど。昔、不安にしてる誰かにこうやったことが……あった、ような。

「一緒に寝れば、怖い夢なんか見ないから」

大丈夫。
その手は下へと落ちるように、やがて彼の目元をなぞっていく。

「だから泣くなよ」
「……っ」

涼は、瞳の色がはっきり分かるぐらい目を見張った。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】

彩華
BL
 俺の名前は水野圭。年は25。 自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで) だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。 凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!  凄い! 店員もイケメン! と、実は穴場? な店を見つけたわけで。 (今度からこの店で弁当を買おう) 浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……? 「胃袋掴みたいなぁ」 その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。 ****** そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています お気軽にコメント頂けると嬉しいです ■表紙お借りしました

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

処理中です...