41 / 149
本音の寝室
#4
しおりを挟む「嫌な夢や怖い夢は人に話した方が良いんだぞー……」
そもそもこの沈黙が耐えられなかった准は別の方向で畳み掛けることにした。
「わかった! 仕事クビになる夢だろ!」
「違います」
「じゃあ地球が滅亡する夢! 宇宙人が地球を攻めてくる夢!」
「違いますが……」
涼の反応は悲しくなるほど薄い。本当、自分でも何でこんな必死になってるのか分からなかった。いやぁ、多分彼の元気を取り戻したいだけなんだと思う。
生憎、想像できる悪夢は全然思いつかないけど。後残るは……。
「じゃあ……人類がゾンビ化して、生存者は自分だけで武器がなくて……」
「准さん、落ち着いてください。ほんとに大丈夫ですよ。何の夢を見てたのかも忘れちゃいましたから。……平気です」
涼は床に座って、俺と同じ目線になった。
「何でしょうね。目が覚めた時にそばにいたのが准さんで、すごいホッとしました」
「ほんとに?」
「えぇ。ほんとに。何でかな……」
自分で言っておきながら、涼は不思議そうに俯き、なにか考え込んでいた。
「涼? 大丈夫かよ」
「へへ、寝起きだからか何かボーッとしちゃって……准さん、お腹空いてませんか? なにか夜食作りますよ」
「おぉ、サンキュー。無理はすんなよ」
声を掛けると、涼は笑ってキッチンへ向かった。
何だろう。気になるのに、いざとなると踏み込めないのは。
早くこの関係を進展させ、この生活に終止符を打たなければいけないのに。俺も本当に臆病だ。
しかしずっとこうしていても仕方ない。立ち上がって、重たいジャケットを脱いだ。
しばらくして、涼は夜食に俺のリクエストしたうどんといなり寿司を作り、簡単なツマミと酒を用意してくれた。
軽くやるつもりだったのに、彼が料理を追加して作るから酒が進んでしまう。気づけば一時間以上、俺は涼に仕事の愚痴をこぼしていた。
「本当、嫌んなるよ……部長は自分の仕事まで俺らに丸投げだし、ちょっとした事ですぐに会議始めるし。その時間で片付けられる仕事がどれたけあると思ってんだ! 残業する身にもなれよ!」
「わかります、その気持ち。あ、ちょっと待ってくださいね」
涼は非常に落ち着いた様子で、氷水をグラスに入れてスッと差し出した。
「お兄さん、これは僕の奢りです。あっ、違うな。……どうぞ、あちらのお客様からです」
荒んだ愚痴を聴かせ過ぎたせいか、涼はバーテンダーごっこを始めた。
0
お気に入りに追加
15
あなたにおすすめの小説
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】
彩華
BL
俺の名前は水野圭。年は25。
自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで)
だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。
凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!
凄い! 店員もイケメン!
と、実は穴場? な店を見つけたわけで。
(今度からこの店で弁当を買おう)
浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……?
「胃袋掴みたいなぁ」
その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。
******
そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています
お気軽にコメント頂けると嬉しいです
■表紙お借りしました

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる