ファナティック・フレンド

七賀ごふん

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跳ね返る雨

#2

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二人でくっついたら歩きにくいはずなのに、足取りはさっきより軽い。
本当に滑稽だ。一人じゃないだけでこのザマ。
「んー……じゃあ准さん、いっそ俺達で付き合っちゃいますっ?」
「ははっ、冗談だろ?」
「冗談です! それは有り得ませんね。すみません」
涼は自分で言っておきながら苦笑いした。

「いやー、モテる男は辛いですね、准さん」
「ん? お前?」
「貴方のことですよ。まぁ何度も言ってますが頑張りましょう」

またまた、彼はファイトいっぱつと言って腕を上げた。それはさておき、彼の台詞が引っかかる。
「俺は二十七年生きてモテたことなんて一度もないよ。モテ期がなかったことだけが個性なんだ」
「隠れモテ期なんですよ~。今まで准さんに惚れた人は皆シャイだったに違いありません。それにほら、准さん鈍感でしょ。好意を持たれても気付かなかったんですよ」
ほら、って言われても自覚がない。尚さら困って口を閉ざした。
「うん、そう。そのせいで色々苦労されてるんですよ。貴方は……真っ白だから」
「何のことか分からんけど。……お、雨やんだな」
通り雨だったんだろうか。いつの間にか雨音が聴こえなくなって、傘を下ろす人が忽ち増えてきた。
「あれ、残念。もう少し恋人ぶってたかったんですけど」
「ったく。女装そんなに気に入ったのか?」
「いやいや! 女装じゃなくて准さんの恋人のフリが気に入ったんです。俺わるい奴ですから」
涼はどこから取り出したのかサングラスを掛け、ニヤッと笑った。

「このポジションを陣取れたら最高だなぁ、って思っただけです」

彼の腰周りで、何かが光った。蛍光色……電子系の何かだと思う。それに音楽も聞こえた気がした。
スマホ……?
いや、まだ彼からは何も聴いてない。失くしたスマホが見つかったとも、新しく購入したとも。
不思議に思ったけど、静かに笑う彼に視線を奪われ気が逸れてしまった。
これが常になってる。だから違和感はなくなってきてるんだ。

涼は、いつも笑っている。

「ふふっ。じゃ、帰りましょ? ……准さん」





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