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気になるひと

#6

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飲み会など団体で訪れる者が増えてきた為、店内の盛り上がりは絶好調だ。しかし准が二本目のワインを開けたとき、加東は制止の声を掛けた。

「准君? ちょっと、もう飲むのはやめとこうか」
「えっまだ全然飲んでませんよ?」

准が驚いて答えると、加東は彼からグラスを取り上げてしまった。
「違うんですよ加東さん、俺は別にそいつが好きなわけじゃないんです。むしろすっごいお節介で迷惑してて。恋人作れ作れってうるさいけど、それができてたら俺の人生はもっと順風満帆だって!」
「わかるよ、その気持ち。だから水飲みなさい」
加東から受け取った水を一気飲みすると、准は少しだけ気持ちが落ち着いた。……気がした。

「ウッ……すみません、俺ちょっとトイレ行ってきます」
「ちょっ、気をつけてよ?」
「はあい……」
彼の心配する声も遠く、浮きそうな足を必死に地につけてトイレへ向かった。やっぱり気持ち悪い。久しぶりに速いペースで飲み過ぎたかもしれない。
混み上がる嘔気に最悪の事態を予想し、足早に進む。だがトイレの手前で何者かに腕に掴まれ、壁へ押し付けられてしまった。
「痛……っ!?」
目の前にいたのは、見知らぬ茶髪の女性。
掛けていたサングラスを少し外して、にっこり笑った。

「こんばんは、准さん。……俺ですよ」

聞き覚えのある、女性にしては低い声。まさか……
「……涼!? なんつーカッコしてんだ!」
吐き気が限界まできている准の前に現れたのは、女装した涼だった。
素の彼と同じ明るめの、しかし長い髪。それから目立つ赤いワンピースを着ている。脚も、太股近くまで見えていた。ビックリなのは、黙ってれば男だと気付かないぐらいのクオリティということ。でも、

「お前って奴は、ほんと……見張っててやるから、今すぐトイレで着替えてこい」
「え、無理ですよ。替えの服持ってません」
「!?」
……という事はこいつ、そのカッコで俺の家から出てきたのか。頼むからやめてくれ。

「それよりすごいでしょ、俺の女装。みんな俺が男だとも知らず、キラキラした目で見てくんですよ。ふふっ……ははははっ! もー楽しすぎ! 俺しばらく女として生きてこうかな? 良い小遣い稼ぎになりそう!」

狂ったように笑う涼を見て、准は一気に酔いが覚めた。作った声も女のようで違和感は無いけど……クレイジーだ。いちいち脚を出していやらしいポーズをとるから、ある意味犯罪だと思う。





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