ファナティック・フレンド

七賀ごふん

文字の大きさ
上 下
19 / 149
押し売り

#11

しおりを挟む



食事を終え、涼がシャワーを浴びてる間に准は一人で酒を飲んだ。そして押し寄せる不安のワケをずっと考えていた。
そのワケとは、恐らく、自分は彼に餌付けされている。涼の手料理は絶品で、自炊がめんどくさい自分にとって天使のような存在だ。彼はそこにつけこんで、俺を意のままに操ろうとしているのかもしれない。怖ッ。

「創ぐらいは相談したいけど……でもなぁ……」

スマホのアドレス帳を開いたものの、またすぐ閉じてテーブルの上に置いた。
根が真面目で常識派の創なら、なんの躊躇いもなく警察に連絡するか、多少乱暴にしてでも追い出すだろう。当然だ。もし逆の立場で、創が名前しか知らない人間を信用しきって家に上げていたら、きっと同じ対応をとる。
つまり、それだけ今の自分が非常識ということだ。

「……あ」

そういえば替えのタオルを用意してなかった。まだ涼はシャワーを浴びてる筈だから、持ってってやるか。
今まさに彼の考え事をしていたわけだが、一旦綺麗に畳んだタオルを持って浴室へ向かった。
「涼? 悪い、ちょっと入るぞ」
准は一応声を掛けて、脱衣所のドアを開けた。しかしそれと見事に同じタイミングで、浴室のドアが開かれた。
「わっ! ごめん!」
やっぱりというか、当然というか、目の前には一糸纏わぬ涼が立っていた。
「タ、タオルを届けにきたんだ。他意は無い」
准は顔を逸らし、タオルだけ彼に差し出した。
心からタイミングの悪さを呪う。
「ありがとうございます。ところで准さん、顔真っ赤ですけど大丈夫ですか?」
「大丈夫。いや、その……わざとじゃなくて」
「そんな恥ずかしがらなくていいのに、准さんてほんとピュアですよね。絶滅危惧種に認定して差し上げたいぐらいです」
「悪かったな! さっさと受け取れ!」
彼が中々タオルを受け取ろうとしないから、仕方なく瞼を伏せて彼の方を向いた。
「もう少し危機感持てよ。お前に欲情とか神に誓ってないけど、俺は同性愛者なんだから」
「あぁ、はい。……でも、准さんも」
涼の言葉が途切れたため聴き返すと、まだ暖かい指先が唇に触れた。

「貴方ほど純粋で無防備な人、そうそういませんからね。俺ですらちょっと悪戯したくなっちゃうな」
「……っ」

作ったような艶のある声。
これは完全にからかわれてる。
さすがに頭にきて、その指先を払い除け、瞼を開けた。





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

カラメル

希紫瑠音
BL
高校二年生である優は学園内で嫌われている。噂の的(主に悪口)である彼に、学園内で手の付けられない不良だと噂の的であるもう一人の男、一年の吾妻に「好きだ」と言われて……。 読み切り短編です。 【()無しと吾妻】後輩後輩(不良?)×先輩(平凡・嫌われ者?) 【川上】先輩(兄貴肌)×後輩(優等生) 【加瀬】後輩(強引で俺様な優等生)×先輩(ビビり・平凡)

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】

彩華
BL
 俺の名前は水野圭。年は25。 自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで) だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。 凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!  凄い! 店員もイケメン! と、実は穴場? な店を見つけたわけで。 (今度からこの店で弁当を買おう) 浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……? 「胃袋掴みたいなぁ」 その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。 ****** そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています お気軽にコメント頂けると嬉しいです ■表紙お借りしました

処理中です...