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押し売り
#11
しおりを挟む食事を終え、涼がシャワーを浴びてる間に准は一人で酒を飲んだ。そして押し寄せる不安のワケをずっと考えていた。
そのワケとは、恐らく、自分は彼に餌付けされている。涼の手料理は絶品で、自炊がめんどくさい自分にとって天使のような存在だ。彼はそこにつけこんで、俺を意のままに操ろうとしているのかもしれない。怖ッ。
「創ぐらいは相談したいけど……でもなぁ……」
スマホのアドレス帳を開いたものの、またすぐ閉じてテーブルの上に置いた。
根が真面目で常識派の創なら、なんの躊躇いもなく警察に連絡するか、多少乱暴にしてでも追い出すだろう。当然だ。もし逆の立場で、創が名前しか知らない人間を信用しきって家に上げていたら、きっと同じ対応をとる。
つまり、それだけ今の自分が非常識ということだ。
「……あ」
そういえば替えのタオルを用意してなかった。まだ涼はシャワーを浴びてる筈だから、持ってってやるか。
今まさに彼の考え事をしていたわけだが、一旦綺麗に畳んだタオルを持って浴室へ向かった。
「涼? 悪い、ちょっと入るぞ」
准は一応声を掛けて、脱衣所のドアを開けた。しかしそれと見事に同じタイミングで、浴室のドアが開かれた。
「わっ! ごめん!」
やっぱりというか、当然というか、目の前には一糸纏わぬ涼が立っていた。
「タ、タオルを届けにきたんだ。他意は無い」
准は顔を逸らし、タオルだけ彼に差し出した。
心からタイミングの悪さを呪う。
「ありがとうございます。ところで准さん、顔真っ赤ですけど大丈夫ですか?」
「大丈夫。いや、その……わざとじゃなくて」
「そんな恥ずかしがらなくていいのに、准さんてほんとピュアですよね。絶滅危惧種に認定して差し上げたいぐらいです」
「悪かったな! さっさと受け取れ!」
彼が中々タオルを受け取ろうとしないから、仕方なく瞼を伏せて彼の方を向いた。
「もう少し危機感持てよ。お前に欲情とか神に誓ってないけど、俺は同性愛者なんだから」
「あぁ、はい。……でも、准さんも」
涼の言葉が途切れたため聴き返すと、まだ暖かい指先が唇に触れた。
「貴方ほど純粋で無防備な人、そうそういませんからね。俺ですらちょっと悪戯したくなっちゃうな」
「……っ」
作ったような艶のある声。
これは完全にからかわれてる。
さすがに頭にきて、その指先を払い除け、瞼を開けた。
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