ファナティック・フレンド

七賀ごふん

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押し売り

#10

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涼が時折見せる表情、声、言葉。
どれも理解できなくて、知らないもののはずなのに……何故か胸が騒ぐ。

「なぁ……俺達、どっかで会ったことある?」

だからつい、こんな質問をしてしまった。
だけど涼は綺麗な微笑を浮かべるだけで、否定も肯定もしない。
「さぁ、分かりません」
きっぱり言い切られると、こっちもそれ以上訊けないから困った。
仕方ない。今は力ずくでも吐かせたいと思わなくなってきてる。
准は立ち上がり、まだブランコに座ってる涼に向かって手を伸ばした。
「帰るぞ。とりあえず、俺ん家に」
「え? いやいや、これ以上迷惑をおかけするのは……」
「そう思ってくれんなら、何で俺のこと知ってるのか話してほしいかな」
准がそう返すと、涼は露骨に困った顔をした。その反応はもう予想していたから、特に何とも思わない。
「……な? 言えないなら来て。俺だって自分の秘密を知ってる奴を野放しにすんのは気が気じゃないんだ」
彼の手を握り、立ち上がらせる。

「いいか?」
「……はい。でも、信じてもらえないかもしれないけど、貴方の秘密は絶対他言しません。俺は、准さんの役に立ちたくて……だから、全て貴方の言う通りにしますから」
「あぁー、もうそういうのはナシ! 俺は別にお前の上司でも何でもないんだから」

ちょっと声を荒らげてしまったが、涼は大して驚かなかった。
准の手を握り返し、泣きそうな顔で笑っている。
「ありがとう、ございます……」
涼は、素直な奴なのかもしれない。いちいち浮かべる笑顔が子どもっぽくて、可愛らしい。
ただ、それだけだ。彼のことは何も知らない。この笑顔の裏で何を目論んでいるかは分からない。

それでも准は身元不明の青年と同居することにした。

冷静に考えて問題だらけ、非常識にも程がある。それは分かっていた。だから心を許してはいけない。一時的に住む家を貸してやるだけ。早いところ前の同居人と話し合って、家を出て行ってもらわないと。
そう思っていた。ところが、

「はい、できました。どうぞ召し上がってください!」
「おぉー! 俺の好きなキムチ鍋!」

その日の夜、准は涼の作った料理に大はしゃぎしていた。
「リクエストして頂ければ何でも作りますよ!」
「マジで? じゃあ明日の朝はフレンチトースト頼む」
よく煮えた白菜を食べる、至福のひととき。

美味い……! でも何故か不安になる。……何でだろう?






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