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元不良少年の計画
#24
しおりを挟む秋はしばらくお怒りモードだったけど、食事自体はとても楽しかった。初めて、好きな人の話題で盛り上がれる。秘密を隠す必要がない、相談できる相手が増えた。……さり気ないことなのに、何だかすごい嬉しい。
いよいよ朝日が上り始めた頃、俺と和巳さんはマンションの駐車場に向かった。
「鈴鳴君は、歩くのも辛いだろう。車で送っていくよ」
矢代さんは申し訳なさそうに言い、車を用意してくれた。
本来なら大丈夫と言いたいところだけど、今回は有り難く乗り込む。もう腰痛過ぎて辛かったからなぁ……。
「鈴鳴!」
矢代さんがエンジンを掛けた時、秋は車の外から窓に手をついた。
「帰ったら安静に……じゃない、大人しく寝ろよ」
そして、和巳さんにも気まずそうに挨拶する。多分、和巳さんは全然気にしてないと思うんだけど。面白いから黙っておいた。
「秋、お前もついでに乗って行ってもいいんだぞ?」
「俺は腰痛いから遠慮するわー。安全運転よろしく、先生」
矢代さんの不敵な笑みに、秋はとてもクールに手を振った。
「鈴鳴。また明後日な」
「……うん、秋。またね!」
窓を開けて、軽くハイタッチする。彼の後ろから差してくる朝陽が眩しくて、目を細めた。
「じゃ、行きますか」
矢代さんは車を発進させる。道が整備されてない所は、ガタガタ揺れるだけで腰に響いた。秋はこれを危惧してたんだな……。
「鈴鳴君、本当にごめんね。身体大丈夫かい?」
「あ、大丈夫です! ありがとうございます」
「俺もごめんな、鈴。ちょっと自制できなかった」
和巳さんは申し訳なさそうに手を合わせる。“ちょっと”のレベルではなかったけど、そこは触れないでおこう。
後部座席に二人で乗り、触れた掌を重ねた。
「……俺、本当にドキドキしちゃった」
「うん。……ごめんね」
悲しそうな顔をされると、やっぱり罪悪感に苛まれる。そんな俺達を見て、運転席の矢代さんはまた吹き出した。
「本当、君達は見てると和むよ」
「そ、そうですか?」
「ああ。というか、多分俺の理想なんだ。秋が俺に求めているのは、そういう単純で、平凡で、基本的なことだと思う。どんな時も笑い合えて話し合える、信頼関係だよ」
矢代さんのハンドルを握る手が、少し強くなった気がする。気分の晴れる洋楽をバックに、車内は空気を変えた気がした。
「秋があそこまで俺に依存するようになったのも、やっぱり俺のせいだから。君達のような関係を目指して、これからも見守っていくよ」
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