余計なお世話係

七賀ごふん

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元不良少年の計画

#3

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俺達の愛の絆が希薄になってるなんて、絶対駄目だ。愛は冷めるもんじゃない、熱しすぎて原形が掴めないぐらいドロドロに融けた液体のことを愛と呼ぶんだ(自論)。
過剰な嫉妬はまずいけど、多少のヤキモチはあってもいいと思う。

「……そう思いませんか、矢代さん!」
「うん、そうだね」

仕事終わりの人で街が賑わい出した頃、和巳は矢代と待ち合わせた高層ビルのレストランにいた。窓一面が夜景を一望できる造りとなっており、ピアニストによる演奏が楽しめる。静かで過ごしやすく、寛ぐには最高だった。
こんな素敵なお店に連れてきてもらえるなんて。嬉しいけど、秋君もお酒は飲めるわけだし……ちょっと悪い気にもなる。

まぁ次は皆で来ればいいか。楽観的に考え、ワイングラスを置いた。
矢代も勤め先から直行で、同じ様にひと息ついている。

「和巳君は、妬かない鈴鳴君に不満があるということかな? まだ学生だし、ドライを装ってるだけという可能性もあるけど」
「確かに。あ、でも不満というわけじゃ……」

とりあえず否定した。別に不満があるわけじゃない。ただ、もっと彼と深い仲になりたいと思ってるだけ。
……でも恋人以上に深い仲って何だ。
死ぬまで共にいることだろうか。うん、確かに人生何があるか分からないし、……易しくて難しいな。
「俺は鈴を愛してます。でも、それがいまいち伝わってない気がするんです」
「どうしてそう思うんだい?」
「それは……」
「好き」って言うと以前の鈴はすぐ照れた。だから早く慣れてもらう為に「好き」と言い続けたけど、今の鈴に「好き」って言うと、「そっか」で終わってしまう。いやいや、「そっか」って。
普通そこは「俺も和巳さんが好き!」みたいなことを言いそうなもんだ。おちゃらけてると思われてしまってるのか、それとも……。

────そうか、分かってしまった。この不満の原因が。
グラスを持つ手が震える。
「和巳君、大丈夫? 何だか顔色悪いような」
「大丈夫です。でも俺、分かっちゃいました。最近の鈴は……っ」
心配そうに見つめる矢代さんの目を見返して、静かに告げた。

「俺への扱いが、雑なんです」
「…………」

わずかな時間、沈黙が流れた。だけど矢代さんは可笑しそうに笑って、グラスを口に運ぶ。
「ふっ……本当にいいね、和巳君は。その素直さが、君の一番の武器だ」
素直……?
彼の笑い声とは反対に、バックで流れるピアノが物悲しい音色に変わる。

「……不思議です。もう恋人なのに、これ以上ないぐらい幸せなのに、どうしてこんなに不安になるのか。愛する自信はあるのに、愛される自信がない。……って、前に鈴が言ってた悩みなんですけど、今頃わかっちゃいました」





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