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三人分の食事
#1
しおりを挟む季節の変わり目は、環境も一変することがままある。
「か、和巳さん。……この子は?」
夜、鈴鳴は仕事から帰って来た和巳を玄関まで迎えに行った。……までは良かったのだが、今日はいつもと違う。和巳の隣に、小さな男の子がちょこんと立っていたからだ。
「ごめん、鈴……実は、俺の隠し子なんだ。今まで黙ってたけど、もう限界だと思って……」
申し訳なさそうに俯く和巳の話を遮り、鈴鳴はドアを閉める。すると勢いよく、彼はドアを開けて入って来た。
「ちょっと鈴、そこはもっと驚きのリアクションするとこでしょ!」
「ご、ごめん。ちょっと混乱しちゃって」
彼のリアクションが良かったので満足してしまった。
心を落ち着けて彼の隣を見ると、そこにはやっぱり、幼稚園ぐらいの男の子がいた。
「えっと、ほんとに隠し子ではないよね」
「ではないね。面白いジョークだったでしょ?」
「和巳さん、今日の夜ごはん少なめにするね」
「ごめんごめん、悪気は無かったんだ! 鈴の慌てふためく可愛い姿が見たくてっ……でも思ったよりクールでショックだった」
俺よりずっと慌てふためいてる彼をスルーし、男の子の前に屈んだ。
「それで、この子はどこの子?」
「あはは、鈴も初めて会うもんな。俺の母さんの妹の子だよ。だから、俺の従兄弟」
「えっ! か、和巳さんの……!?」
驚いて大きな声を出してしまった。俺は和巳さんのお母さんの親戚はあまり付き合いがないから知らなかった。
「ほら、この人がさっき話した鈴鳴お兄ちゃんだよ。挨拶してごらん」
「……」
男の子は、普通に俺から顔を逸らして和巳さんの後ろに回った。何故? 俺何かした?
不安に思ってると、和巳さんは困ったように彼を支えた。
「あーもう、しょうがないなぁ。ごめん鈴、この子すごい人見知りなんだよ。許してやって」
「あ、あぁ……そっか。大丈夫だよ、とりあえず中に入ろう」
その子も招き入れて、温かい紅茶を用意した。一応、男の子にはオレンジジュースを入れて差し出す。すると普通に飲んでくれたから、ちょっとホッとした。
「この子は瀬賀倖地君《せがこうち》。今幼稚園、年少、年中、年長……五歳って、年中?」
「年中だね」
「へぇ。でも結構しっかりしててさぁ、鈴のちっちゃい頃みたいでホントに可愛い。……なのに何で俺がアメリカ行ってる間に生まれちゃったんだろ」
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