余計なお世話係

七賀ごふん

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和巳の一日

#2

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前から楽しみにしていたこともあって、気分が上がってしょうがない。待ち合わせを決めたあと、鞄を持って玄関へ向かう鈴を見送った。
「じゃあ和巳さん、行ってきます!」
「行ってらっしゃい。気をつけて」
また軽く触れ合って、彼の後ろ姿を見つめる。今さらながら大学生なんだな、と再認識し、嬉しいような寂しいような不思議な気持ちになる。
なんせ高校生の彼を見ていないから、彼は階段を一つ飛ばして大人になったんじゃないか、なんて謎の考えが頭に浮かんだ。

「ん?」

気を取り直して部屋の掃除をしていると、スマホの着信音が鳴った。掛けてきたのは鈴の父、正剛叔父さんだった。

「もしもし。おはようございます、叔父さん。和巳です」
『おはよう和巳君。こんな朝早くに電話してすまない。今、時間大丈夫かな?』
「ええ、暇なぐらいで……。どうされました?」
トースターを拭く傍ら、スマホを耳に当てる。

『その、鈴鳴はどうしてる? 迷惑かけてないかい?』

とても穏やかな声だった。というより、この人は普段は“そういう”人だ。声を荒らげるような事なんてまずないし、……言い方が悪いけど腰の低い人なのだ。なのに鈴の前では厳格な父親を演じている。鈴にだけ厳しく、あたりがきつい。正直俺の父親の方がよっぽど優しい。

「大丈夫ですよ。鈴は本当に気が利く子ですから、帰ってきてからずっと助けてもらっています」

決して叔父を冷たい人だとは思っていない。彼の鈴に対する態度はなにか理由があるはず。
『そうか。……それならいいんだけど』
「えぇ。あ、そうだ。叔父さん、この前の花瓶事件は本当に鈴も反省してて、あれからお酒は一滴も飲んでないんです」
一旦手を止めて笑って言うと、電話の先からとても暗い声が聞こえた。
『あぁ……実は、その事でちょっと』
「……?」
さっきまでと違う空気が回線を通り越して伝わってきた気がした。スマホをしっかり持って、彼の話に耳を傾ける。
それは、とても小さなこと。でも笑って流すには、……それこそ鈴にとっては大きなことかもしれない。話を聞き終わってから、ゆっくり、しかし力強く答えた。

「そうだったんですね……。大丈夫ですよ、叔父さん。俺に任せてください」

力強く言うと「迷惑をかけてすまない」、という言葉が返ってきた。それに笑って返事して、電話を切った。




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