余計なお世話係

七賀ごふん

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新生活

#12

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「鈴はもっとエッチなことがしたいのかな?」
「あ……! いや、したいとかってわけじゃ」
「じゃあしたくない?」
「いや、したいです! ……でも、したくてしょうがないってわけでは」

しどろもどろに返すと、和巳さんはゆっくり自分の髪をタオルで拭いた。
「わかるよ。それに関しちゃ色々準備が必要になるし、体調も大事だし、もっと時間をかけていった方が良いね。焦らず、ゆっくりやってこう?」
「は、はい」
「下調べも大事。でも鈴、AVは駄目だよ。あれは結局観る側が楽しめるように、って作られたものだから。ちゃんと正しい知識を身につけないとね……ゲイ関係の物はどれぐらい持ってるの?」
「えーとDVDを五本、それから漫画と小説を五、六冊ほど」
「へぇ、意外と持ってるんだね」
和巳さんは笑って髪を乾かしている。でも正直困り果てていた。

……嘘ついちゃった。
本当はDVDを二十五本、書籍を二十二冊持ってる。その他にも大量の腐男子グッズが押し入れに詰まってる。
頭の中で土下座した。ドン引きされたくなかったからって、こんな大嘘をついてしまうなんて。つくづく自分が嫌になる。
「鈴、後で一緒に心霊系のテレビ見よー」
「は、はい!」
彼は俺がこの六年でどれだけ汚れたか知らない。隠し通すことが良いのか、いっそ打ち明けた方が良いのか。結局一晩悩んだ。

そして翌日、悩みに悩んだ末、俺は決断した。
長年に渡ってコレクションしてきた宝物のBLグッズを手放す。これからは誠実に、恋人の和巳さんだけを想って生きていこう。
「鈴は今日から学校か。頑張ってね! 俺も色々用事片付けたいから、今日は一日外に出ると思う」
「そうなんですね。……あ、それなら」
棚の引き出しからある物を取り出し、彼に手渡した。

「家の合い鍵です。これがあれば、俺が家に居なくても帰って来れますからね」
「わ。ありがとう、鈴。何かすっかり家族みたいで嬉しいなぁ」
「はい、俺も!」

彼の笑顔を見た途端ホッとした。
未だに現実世界がふわふわしてる。昔みたいに「おかえり」と「ただいま」を言い合える環境にいることが幸せでしょうがない。
「気を付けて行ってきな。……ところで鈴、そんなの持って学校行くの?」
和巳さんは玄関まで見送りにきてくれたけど、俺が持ってる小ぶりのキャリーケースを不思議そうに指さした。
「ウッはい。今日は必要な資料がたくさんあって……」
「へー、大変だなぁ。気を付けてね」
「ありがとうございます。行ってきます!」
嘘に嘘を重ねるって、本当に胸が痛い……。
彼を心配させない為最大限の笑顔をつくり、元気よく家を出た。




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