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お出迎え
#16
しおりを挟む和巳さんは、伯父の息子。父さんの、お兄さんの子。
祖父の長男の一人息子だ。現在会社の取締役は伯父さんだから、行く行くは彼も重役を任される可能性が高い。
ウチの家は本当に変わってる。六年前に和巳さんが留学するまでは、俺は彼をお手本にするよう父から強く言われていた。
彼に尽くし、彼を見習い、彼の為に時間を捧げる。時間ばかりではなく、身体も、心も。全てを犠牲にして、俺が愛した人だった。彼の為なら惜しまず何でもするように父から言われていた。
依存に近かったかもしれない。だから彼が留学する手前は、また別の理由で怒られていた。
『鈴鳴。いつまで和巳君に頼ってるつもりだ?』
父に言われた言葉が胸に突き刺さった。
彼はこれから自分のことで忙しくなる。いつまでも俺の傍で、優しく見守っててくれるわけじゃない。父はそう続けた。
もっともだ。現実ってのは辛いけど、どうしようもなく現実的な話だった。
とはいえ和巳さんなしで、俺はこれから何を生き甲斐にしてけば良いんだろう。
小さな時から、狭い世界の中で俺は常に二番目。優先順位の一番は和巳さんで、俺に期待する人はいなかった。年齢的なものもあると思うけど、それ以上に俺は気が弱くて人見知りで、取り柄もない。期待しようにもできなかったんだろう。
だから尚さら彼への期待が高まり、俺は誰からも好かれる彼の優しさに甘えた。
────和巳さんの幸せが俺の幸せになる。
この理念は十四年かけて刷り込まれた洗脳の集大成と言えた。
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