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お出迎え

#5

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中腰になって見ると和巳さんは女子トイレに入ろうとしていて、女性の店員に止められていた。
「あ、本当だ。すいません、何も見ないで入ろうとしちゃった」
そう言い残し、男子トイレに入って行った。

和巳さん……!
帰国早々トイレを間違えるとは。でもそんなおっちょこちょいな所も彼の魅力のひとつだ。下手したら警察沙汰だけど。

二杯目のウーロン茶を飲みながら、彼への止まらぬ愛と妄想の海に浸かった。

本当に懐かしい……。

和巳さんには何から何までお世話になった。だから今度は、俺がその恩を返す番だ。頑張らないと。
そう自身の胸に言い聞かせてると、彼は小走りで戻ってきた。
「おーい鈴。聴いてくれよ、今間違えて女子トイレに……あっ!」
驚くことに彼は何もないところで躓き、俺の座るテーブルに顔面から激突した。
「だ、大丈夫ですか!! お怪我は!?」
「いたた……いや、大丈夫。当たりどころが良かった」
「は……!?」
よく分からないけど、幸い怪我はなさそうだ。

さすが和巳さん。大胆にずっこけても一切の動しない。むしろ風格すら感じる。
「ん……?」
ところが、ここである大問題に気付いた。ぶつかった拍子に倒れた俺のウーロン茶が、彼のズボンをぬらしている。しかも最悪なことに股間にピンポイント。
「和巳さん! 股間が大変なことになってます!(※小声)」
「ほんとだ、何か冷たいと思ったら……!」
「大変だ……す、すぐにトイレに……」
だが、やはり彼は落ち着いていた。変色した自身の股間を鞄で隠し、トイレの方に向き直る。
「慌てんぼうだな、鈴は。これぐらいで大騒ぎしてたら生きてくのが大変だよ」
そう言って彼は颯爽と、しかし堂々と通路のど真ん中を歩いた。

さすがだ。俺なら冷静になるのに時間がかかりそう。
彼は俺の知らないところで、自分の力で生きてたんだ。頭では分かっていたけど、改めてその強さを思い知る。
この人についていきたい。昔と同じように、ただ一途に。

……彼のお世話をしたい。そう思った。

「お客様! そっちは女子トイレです!」
「うあっすいません」

トイレの方で聞こえた会話から、また強くそう思った。





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