余計なお世話係

七賀ごふん

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お出迎え

#2

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「ふぅ……っ」

外は暗く肌寒い。駐車場に車を停めて歩くと、顔にあたる夜風に身震いした。
一時間以上運転してやって来たのは首都圏の国際空港。とても急だったが、間に合って良かった。

大学二年生の日永鈴鳴ひながすずなりはスマホで時間を確認して、ひとり目的の第一ターミナルへ向かった。
ここに来たのは実に六年ぶりである。六年前、海外へ飛び立つ従兄弟を見送りに行った、あの日以来。

あぁ……緊張する……!!

この感じ、あの時と似てるぞ。大学入試のときと同じ、あの胃液が上がってくる感覚に。

十九時四十五分。もうすぐだ。
電光掲示板を見て、彼が乗ってるであろう飛行機の到着時間を交互に見合わせる。
ここへ来たのは、帰国する従兄弟を出迎えるためだ。
到着ロビーでしばらく待っていると、大勢のフライト客がやって来た。ひとりひとり注視していたその時、ある青年に目が留まった。
うっすらと、しかし確かに感じる、懐かしい雰囲気の青年。

「か……和巳さん!」
「……鈴?」

鈴鳴は小走りで彼の元へ向かった。
「うあぁぁ……やっぱり和巳さんだ……! お久しぶりです!」
涙目で言うと、彼は掛けていた眼鏡を外して笑った。
「本当に……久しぶりだな、鈴。すっかり大人になってるから見違えたよ。最初誰だか分からなかった」
キャリーケースから手を離し、彼は強く鈴鳴を抱き締めた。
「迎えに来てくれてありがと。すごい嬉しい」
「……っ!」
少しだけ、周りの視線を感じた。降りてきたのも待っていたのも日本人だし、男同士でこの熱い抱擁はちょっと目立つ。
ドキドキしたし、気まずいから早くこの場から離れたい。
それでも、まだ彼に会えた喜びの方が勝っていて動けない。逸る鼓動を抑えて、彼の両手を握った。
「ずっと待ってました。……おかえりなさい、和巳さん。さぁ、俺の家に帰りましょう!」
「おぉ。でも、本当にお前の家に泊まっちゃっていいの? 彼女とかいたら困らない?」
「困りません。な生まれてこの方彼女できたことないんで」
つい大声で言ってしまって、また視線を感じた気がした。やばい。一回落ち着こう、俺。
これからは頑張って、和巳さんの役に立つぞ……!

四つ歳上の従兄弟、日永和巳ひながかずみに再会した鈴鳴は喜びの気持ちで一杯だった。






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