校外活動

七賀ごふん

文字の大きさ
上 下
21 / 22
一泊

#6

しおりを挟む



そして、また一週間後。

「みーなとっ。実は遊園地のワンデーパス手に入ったんだ。週末一緒に行こう!」
「お前受験のくせに遊んでばっかで平気なのかよ!?」
遠出したことでリミッターが外れたのか、もう週一で圭一に遊びに誘われるようになっていた。
やっぱり彼は大学に進学するらしい。まぁ、大丈夫だと信じたいけど……。
「湊が俺の受験を心配してくれるなんて嬉しいなぁ。でも大丈夫、俺なら何とかなる。もっと言えば受験なんかスキルアップの一つとしか捉えてないもん」

あんなこと言ってる……。
正気か確かめたいぐらいだ。でも彼と話してると本気で杞憂の気がしてくるから、ある意味魔力かもしれない。

初めて会った時から、それはずっと。
彼に振り回され、そして惹き付けられていた。

「落ちても俺のせいにすんなよ」
「ないない。この天才的な圭一君に限って」
「そう言って余裕かましてる奴ほど落ちたり……」
「じゃあ決まり! 週末は遊園地デート!」
駄目だ。もう聴いてない。
溜息をついて、軽く走る彼の後に続いた。
「あぁ。心配しなくても、湊が受験の時はちゃーんと面倒見てあげるよ。いや……」
淀みなく喋ったり、考え込んだり、意味不明なアクションを起こしたり。

「一生。俺の命が尽きるまで面倒見てあげるから、安心してね」
「不安」

常に忙しい。
一緒に走らされるから時間を忘れる。
これからもずっとこんなんかな。そう思ったらウンザリして、今から疲れそうだ。

こんな奴を好きになったのが運の尽き。……いや、好き……じゃない。
大好きなんだ。 
愛してるっていうのはまだ当分口に出せそうにないから、心の中だけに留めておく。

本当は俺だけを見てほしくて、けどそんなことは間違っても言えなくて。まだまだ胸焼けしそうなほど甘い台詞を聞かせてほしい、とも言えない。でもそんな恥ずかしい願望を彼は笑って叶えてくれそうだ。

もうちょっとだけ寄っかかっていたい。

世界で一番かっこつけてる、大好きな恋人に。








  ―校外活動―



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

あの頃の僕らは、

のあ
BL
親友から逃げるように上京した健人は、幼馴染と親友が結婚したことを知り、大学時代の歪な関係に向き合う決意をするー。

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

ヤンデレだらけの短編集

BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。 全8話。1日1話更新(20時)。 □ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡 □ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生 □アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫 □ラベンダー:希死念慮不良とおバカ □デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。 かなり昔に書いたもので芸風(?)が違うのですが、楽しんでいただければ嬉しいです!

雪は静かに降りつもる

レエ
BL
満は小学生の時、同じクラスの純に恋した。あまり接点がなかったうえに、純の転校で会えなくなったが、高校で戻ってきてくれた。純は同じ小学校の誰かを探しているようだった。

失恋して崖から落ちたら、山の主の熊さんの嫁になった

無月陸兎
BL
ホタル祭で夜にホタルを見ながら友達に告白しようと企んでいた俺は、浮かれてムードの欠片もない山道で告白してフラれた。更には足を踏み外して崖から落ちてしまった。 そこで出会った山の主の熊さんと会い俺は熊さんの嫁になった──。 チョロくてちょっぴりおつむが弱い主人公が、ひたすら自分の旦那になった熊さん好き好きしてます。

告白ゲームの攻略対象にされたので面倒くさい奴になって嫌われることにした

雨宮里玖
BL
《あらすじ》 昼休みに乃木は、イケメン三人の話に聞き耳を立てていた。そこで「それぞれが最初にぶつかった奴を口説いて告白する。それで一番早く告白オッケーもらえた奴が勝ち」という告白ゲームをする話を聞いた。 その直後、乃木は三人のうちで一番のモテ男・早坂とぶつかってしまった。 その日の放課後から早坂は乃木にぐいぐい近づいてきて——。 早坂(18)モッテモテのイケメン帰国子女。勉強運動なんでもできる。物静か。 乃木(18)普通の高校三年生。 波田野(17)早坂の友人。 蓑島(17)早坂の友人。 石井(18)乃木の友人。

毒/同級生×同級生/オメガバース(α×β)

ハタセ
BL
βに強い執着を向けるαと、そんなαから「俺はお前の運命にはなれない」と言って逃げようとするβのオメガバースのお話です。

後輩に嫌われたと思った先輩と その先輩から突然ブロックされた後輩との、その後の話し…

まゆゆ
BL
澄 真広 (スミ マヒロ) は、高校三年の卒業式の日から。 5年に渡って拗らせた恋を抱えていた。 相手は、後輩の久元 朱 (クモト シュウ) 5年前の卒業式の日、想いを告げるか迷いながら待って居たが、シュウは現れず。振られたと思い込む。 一方で、シュウは、澄が急に自分をブロックしてきた事にショックを受ける。 唯一自分を、励ましてくれた先輩からのブロックを時折思い出しては、辛くなっていた。 それは、澄も同じであの日、来てくれたら今とは違っていたはずで仮に振られたとしても、ここまで拗らせることもなかったと考えていた。 そんな5年後の今、シュウは住み込み先で失敗して追い出された途方に暮れていた。 そこへ社会人となっていた澄と再会する。 果たして5年越しの恋は、動き出すのか? 表紙のイラストは、Daysさんで作らせていただきました。

処理中です...