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#5

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「これから発表だってさ。見に行こうぜ」

少年の声に、多くの生徒は頷いて教室を出て行ってしまった。気付けば、教室には三尋となづなしか残っていなかった。

賑やかだった教室から、あまりにがらんとした光景。何に取り残されたのかも分からないが、さすがに寂しい。
「な、なづな。皆、あんな急いでどこに行ったんだ? 生贄がどーのこーの言ってたけど……」
少し引き気味に問い掛けると、彼は俯いた。そして、どこか苦しそうに首を横に振る。
「いいんだよ、放っておこう。あんな馬鹿馬鹿しい……正気じゃないよ」
「……?」
彼の回答は不明瞭で、やはり騒動の理由は分からない。だが、なづなの様子からして、それが決して“楽しい”ものではない気がした。踏み込みたくもなくて、それ以上は聞けなかった。


転校初日から妙な違和感。

しっかし、生贄。生贄って……。
漫画やゲームの話みたいだ。もしくは、どうしても古典的なものを思い浮かべてしまう。ここは現代、学校で、しかももう自分達は高校三年生。
この歳で中二病はさすがに痛い。痛々しいこと山の如しだ。
そうは思うが気になって、なづなと別れた後に三年生の教室が並ぶ廊下を見て回った。

ある教室まで来た時、人だかりを見つける。そこでは、誰かの悲痛な叫びが聞こえた。

「嫌だ……何で俺なんだよ! レイプの生贄とか、ふざけんな! 頭おかしすぎるだろ……!」

思わず何もない所で転びそうになる。
三尋は反射的のその声のする方へ向かった。
一人の少年が泣きながら、黒板に書かれてある文字を消している。必死に、……必死に。

「うわあ……辻浦のやつ、かわいそー」

誰かのつぶやきが聞こえた。次いで、黒板の方に視線を移す。
つじ……うら……。
消えかけの文字を読んだ。彼が消そうとしてる文字を。
うっすらとだが分かる。そこには、こう書かれていた。

次に犯すのはお前だ、と。




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