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再
#6
しおりを挟む心と脳を蝕む難病のカテゴリーは、ある人には混乱を、ある人には平静を与えた。
それまで順調に生きていた人はほとんどがパニックに陥り、病状が進行した。だが元々下り坂の生活を送っていた人々は、発病前より現実的な考え方ができるようになっていた。
残りの人生をどう過ごすか。
一秒だって無駄にはできない、有限の尊さ。自分を支えてくれた周りの人に初めて関心を抱き、向き合う機会を得た。
相変わらず治療法は見つからないけど、非可逆性だと思われていたこの病は、日々変化しつつある。病が変異したのか、それとも人が変わったのか……事実は誰にも分からないが、心から信頼できる人の支えがあれば、症状が緩和される事例が現れ始めた。
しかし未だ沈んでいる者に手を差し伸べる団体は少数で、悪影響を受けたくないから避ける者が圧倒的だ。それをどうにか変えたくて、従来の施設の在り方を見直すことにした。
恐れたら負ける。病に罹った人達が壊れていく姿を指をくわえて見ているだけなんて、もう懲り懲りだ。
結果的には何ヶ月も、何年もかかってしまったけど、会社を辞め、初めて自分が納得できる医療施設をつくった。
今までのように閉鎖的なものではない、解放的な空間。外部の人が気軽に入れる場所が、本当の意味での「家」だ。昼間は子ども達が遊びに来て、患者とゲームしたり宿題をしたりする。それまで誰とも関わらなかった大人の入所者達が、子どもと楽しそうに話している光景を目にするようになった。
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