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七賀ごふん

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今から数日前……。

その知らせは、自分が管轄している事務所にもすぐに届いた。東京都××区にある支援施設の傷害事件。入所者の男Aが、同じ施設の入所者Bに暴行を働き身柄を拘束された。凶器で全身を殴られたBは重体でそのまま入院。だが、その場に居た施設の管理者は、被害者Bから性的暴行を受けていた、と。

『うわ……なんかややこしい……酷い事件ですね』

わずかに視線を向けて、再び手元に戻した。
新たに配属された特定疾病専門の相談事務所で、前の上司が残していった山のような書類をひたすらシュレッダーにかけていた。男の部下は「え、え、それシュレッダーかけて良いんですか?」と繰り返していたが、誰かがコーヒーをこぼして変色してるし、床に散乱して埃まみれだし、必要な保管期限はとっくに過ぎている。自分がこれから管理する以上、こういう邪魔なものは片っ端から捨てていきたい。人じゃないんだから、大事なものだったら取り寄せればいい。ものは、人と違う。

『ほら品場さん、見てください。俺知ってますよ、ここの法人。前もどっかの施設で騒ぎを起こしてました。上のリスクマネジメントがなってないんですよ! 人員が足りないのは分かるけど、こんな危険な入所者を受け入れてる以上、もっと対策を講じるべきでしょう。いつだって現場の人間が犠牲になるこのシステム、どうにかなりませんかね』

まだ若い彼は怒りを隠そうともせず、ファックスで送られてきた事故報を眺めていた。何となく嫌な予感がして、その紙を覗いた。特定できそうな施設名や詳細は伏せられているが、何故か俺はこのとき確信していた。

ここは影山が管理している施設だ。





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