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七賀ごふん@小説/漫画

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現代の医療や化学では解明できない、人に伝染うつる未知の精神病。

予防はひとつ。罹患者を避けることだけ。人は闇を極端に恐れ、暗い感情に触れることを拒む本能がある。
自分と影山はもちろん、この病を持つ者に関わった人は皆精神状態が悪化した。メンタルヘルス対策無しに患者と関わることは自殺行為同然だった。それを知らなかった数年前の自分達は見事に伝染し、今日まで精神安定剤だけを頼りに闘ってきた。

影山の進行が特別速かったのは彼の元々の性格も災いしているのかもしれない。彼は元々分裂していた。幼少期に父から虐待を受け、唯一の味方だった母は離婚後に死去。兄と二人で育ったが、その兄も病に罹り無惨な死を遂げている。
六年前に影山が退職した後、納得できずに彼の経歴を調べた。そこでやっと、彼の異常性に気付いた。

彼は快楽主義者だった。相談者と関係を持ちやすいことから二度に渡って異動させられ、品場の職場に配属された時が上層部の最後の温情だったという。しかしそこでも揉め事を起こし、結果として姿を消した。
影山は嘘はつかない。本当のことしか言わない。少なくとも、言ったその時は……。だが破壊衝動に囚われた彼が顔を出した瞬間、全ては覆される。

里川の家に行った時、彼は詳しいことを何も言わなかった。
だからあの時に気付くべきだったんだ。彼が、里川に「襲われた」と一言も言わなかったことを。

「ふふっ……ん、……ふふ……」

影山は里川の家に行き、彼の誘いに乗ったのだ。後になって我に返り、家から飛び出したところ品場に保護された。 
紙っぺらより簡単に反転する理性は、影山を壊し続けた。
今も狂ったように、泣きながら笑っている。
笑っては泣いて、喜んでは後悔して、を数年。彼はもう限界だった。




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