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七賀ごふん

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物心ついた時から活発で悪戯好きで、時には教師の逆鱗に触れて廊下に立たされることもあった。良くも悪くも奔放に生きる品場の周りは自然と人が集まり、いつの時代もムードメーカーだった。成長するにつれ突飛な言動や目立つ行動は控えるようになったが、それでも気付けばコミュニティの中心にいた。
真ん中にいる人間がいるということは当然、外野に弾き飛ばされる人間もいるということで。普段は日陰に入って大人しいタイプが、自分を悪く言っていたことは知っている。

対極的なもの、というのは必ず存在する。光があるから闇が生まれるように、幸せな者が現れると不幸な者が生まれてしまう。
希望を認識したその瞬間から絶望が生まれる。無干渉無関心というわけにはいかない。できれば常に超然と振る舞いたいものだが、完全に他者をシャットアウトするほど人は利口ではない。
品場も今では二十八になり、長いものには巻かれる人間になった。少しでも誰かの役に立ちたいと思って就いた調査員の仕事はやり甲斐があるが、終わりの見えないマラソンを走らされているようで時々息苦しくなる。

誰かの役に立ちたいとは、なんて漠然とした願望だろう。きっとどんな職に就いても誰かしらの役に立っている。医者や警察、消防士なんて特殊な職業じゃなくてもいい。誰かがやらなきゃいけない仕事は、絶対的に誰かの役に立っている、尊い仕事なのだ。なのに手応えがないと物足りないと思うのは、やはり傲慢だろうか。
考えても答えは出ないので、消灯と戸締りをして職場を出た。
見晴らしのいい自然公園を横切り、駅へ向かうほどビルの列と人通りが増える。大きな交差点はおびただしい量の車と七色の光が煌めいていた。
こうして見ると世界は変わらない気がするのに。道端に座り込んだり、青い顔で俯いている人達を見ると急に現実に引き戻される。





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