カテゴリー

七賀ごふん

文字の大きさ
上 下
2 / 90

#1

しおりを挟む



この世には二種類の人間がいる。
男と女、善と悪、そしてもうひとつ区別すべき、最強で最悪なカテゴリー。

「あ~もう何もかも憂鬱。死にたい……」
「そんなこと言っちゃ駄目だよ! 生きていれば楽しいこともいっぱいあるから元気出して!」

両極端な二つのタイプ。ポジティブな人間とネガティブな人間だ。
『ネガティブな人は年々増加傾向にあります。政府は緊急レベルを引き上げ、早々に解決策を提示すると発表しました』
そんな報道が流れるほど、世界は淀んでいた。
ネガティブな人間がポジティブな人間に与える影響は凄まじく、ひと月一緒にいただけでとても消極的な性格へ変貌してしまう。それはもはや伝染病で、災害レベルと言っても良かった。
もちろんネガティブな人にも程度があり、軽いタイプなら全く問題ない。しかしこれが重度になると日常生活を営むことすら難しく、中には希死念慮を抱く者もいる。

現代のネガティブは病も同然。でもネガティブ手当てなんてものはない。ネガティブ休暇もない。いっそ作ってみたら少しは軽減するかもしれないのに。

「そんなわけないでしょう。ポジティブな人間がネガティブだって嘘ついて、休暇取り放題ですよ。週明けはブルーマンデーなんで休みまーす、って。ネガティブな人間は三百六十五日年中無休でネガティブ発揮してるけど」

同僚が、振り返らずともうんざりした顔を浮かべていることが分かった。
ネガティブな人間をサポートする仕事は、例え自分がどんなにポジティブでも疲れてしまう。多少の皮肉を言いたくなるだろう。
ネガティブな人種と真剣に向き合う毎日は非常に疲れる。というか、普通に病む。胃痛が半端じゃないし、朝陽を浴びると天に召された気分になる。日々着実にネガティブな人間へ変貌している気がする……ことを、今度上司に相談しようと思う。

品場慎也しなばしんやと記された業務報告書と必要書類を封筒に入れ、街で唯一の郵便局へ届けた。声が小さく決して目を合わそうとしない受付に封筒を託し、暗澹とした空の下に再び踏み出す。
この街はいつも曇っている。その色が反射し、人々の顔にも影を落としている。こちらまで鬱々としてしまいそうだが、モチベーションを下げてはいけない。自分は彼らの心に光を差し込む為にやってきたのだ。






しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

君の愛に狂って死ぬ

和泉奏
BL
目が覚めたら病室にいた。 ベッドの傍で俺の手を握り、安心したように笑う彼を俺は知らない。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

仕事ができる子は騎乗位も上手い

冲令子
BL
うっかりマッチングしてしまった会社の先輩後輩が、付き合うまでの話です。 後輩×先輩。

別に、好きじゃなかった。

15
BL
好きな人が出来た。 そう先程まで恋人だった男に告げられる。 でも、でもさ。 notハピエン 短い話です。 ※pixiv様から転載してます。

彼は罰ゲームでおれと付き合った

和泉奏
BL
「全部嘘だったなんて、知りたくなかった」

幸せな復讐

志生帆 海
BL
お前の結婚式前夜……僕たちは最後の儀式のように身体を重ねた。 明日から別々の人生を歩むことを受け入れたのは、僕の方だった。 だから最後に一生忘れない程、激しく深く抱き合ったことを後悔していない。 でも僕はこれからどうやって生きて行けばいい。 君に捨てられた僕の恋の行方は…… それぞれの新生活を意識して書きました。 よろしくお願いします。 fujossyさんの新生活コンテスト応募作品の転載です。

キンモクセイは夏の記憶とともに

広崎之斗
BL
弟みたいで好きだった年下αに、外堀を埋められてしまい意を決して番になるまでの物語。 小山悠人は大学入学を機に上京し、それから実家には帰っていなかった。 田舎故にΩであることに対する風当たりに我慢できなかったからだ。 そして10年の月日が流れたある日、年下で幼なじみの六條純一が突然悠人の前に現われる。 純一はずっと好きだったと告白し、10年越しの想いを伝える。 しかし純一はαであり、立派に仕事もしていて、なにより見た目だって良い。 「俺になんてもったいない!」 素直になれない年下Ωと、執着系年下αを取り巻く人達との、ハッピーエンドまでの物語。 性描写のある話は【※】をつけていきます。

僕の幸せは

春夏
BL
【完結しました】 恋人に捨てられた悠の心情。 話は別れから始まります。全編が悠の視点です。 1日2話ずつ投稿します。

処理中です...