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一年生の目標(再考)

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気が付いたら生徒会室の前にいた。無意識に歩いてここに辿り着いたのは、我ながらすごい。
すごいけど……それより、七瀬先輩に何て言おう。

混乱する。いや、ボーッとしてるのか。幽体離脱でもしてしまったような、ふわーっと宙に浮かんでいくような感覚。普通に立っていても踵が浮いてしまう。
けど、分かりきってることもある。どのみち告白はできない。二人は付き合っていた。自分が入る余地なんて始めからなかった。

それを先輩に伝えたらどうなるだろう。カップルを憎んでる先輩に伝えたら……もしかしたら、彼は二人を……。
「綿貫?」
後ろから突然掛けられた声にビクッとして、ドアは開けずに振り返った。

「真弘、先輩……」

偶然目に入った窓の外は真っ暗だ。こんな時間まで学校に居たのは初めてかもしれない。関係ないけど、そんなどうでもいい事を考えていた。
「よう。部活帰りか? 生徒会室、もう閉めるけど。用事あった?」
真弘先輩は部屋の鍵をチラつかせ、横を通り過ぎてドアの前に立った。
「あの、七瀬先輩は……」
「あ、あいつに用か。残念だけど用事あるとかで今日はもう帰ったよ」
そうか。いないんだ。

「そうですか。……良かった」

真弘先輩は、鍵を掛けようとしていた手を止めた。そして低い声で問い掛ける。
「何かあったのか」
「いえ……」
その先の感情を感じ取れたから、視線は足下に落ちた。責められてるわけじゃないのに、彼と一緒にいることも心苦しい。
真弘先輩は七瀬先輩と違い、直接的に関わろうとしてくる。遠慮ないところは一緒だけど、距離を縮めるスピードはゆっくりだ。だからたまに油断して、余計な部分まで見せてしまう。




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