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一年生の目標(再考)

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翌朝、綿貫は欠伸を堪えながら登校した。
「綿貫、おーはよ!」
「うわっ!」
弾んだ声が聞こえたと同時に、後ろから抱きつかれる。相手は藤平だった。
「今日もちっちゃいなー、お前」
「余計なお世話だよっ」
軽口を叩きあっても、ホッとしていることが分かる。やっぱり安心する。 七瀬先輩は向こう水で強行だけど、……冷静に考えると間違っちゃいない、と思った。
本当に叶えたいことなら、当たって砕ける覚悟も必要なんだ。こっちから行動を起こさない限り、事態は何も進展しない。
思いきって覚悟を決める。今日、彼に告白ができるように。
「あのさ、藤平……今日、一緒に帰れる?」
どう転んだって良い。そう思ったけど、
「あ。ゴメン、今日はちょっと用事あんだ。明日一緒に帰ろうぜ!」
って、いきなり上手くいかなかった。
「わかった。じゃあ明日帰ろ」
「おう。……そうだ、せっかくだからどこか遊びに行こうぜ」
「うん!」
まぁ今日でも明日でも良いか。むしろ期間が延びて、またホッとしいる自分がいる。本当に情けない……。
今日は特に生徒会の用事も無いし、久しぶりに遅くまで部活で練習しよう。告白の練習も……必要だったりするし。
勝負するとしたら、明日だな。

────放課後、全ての部活の終了を告げるチャイムが校内に響き渡った。

「綿貫、まだ帰んないの?」
「ううん、もうちょっとだけやったら帰るよ」

帰り支度をする同じ部員達を見送って、地面に散らばったボールを片付ける。練習は毎日参加しないと駄目だ。他の部員と比べて、体力や技術の差が顕著に出てしまっている。たまにこうして頑張っても、明日やらなければ周りに遅れをとる。日が延びれば延びるほど不利になる。生徒会との両立……というよりは、先輩命令のカップル捜しが地味に痛かった。時間は大事だ。限られた時間を有効に使わないといけない。

ふと、それは恋愛も同じように感じた。自分から働きかけないと何のレスポンスもない。いやそもそも、恋愛は一体一の試合じゃない。外野から思いがけないサーブが入ることもある。
どんなに順調に進んでいても勝てる保証はない。横槍とも違うけど、自分以外の全ては敵と同じに見るべきだ。戦わないといけない。守らないといけない。

……何を?

拾い上げた最後のボールが一番汚れていた。これは勝つための道具……逆の発想をすれば、自分を負かすかもしれない道具。





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