人の恋路を邪魔しちゃいけません。

七賀ごふん

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一年生の目標(再考)

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「あいつ逃げやかったな」

綿貫が部屋から去った後、夕夏は忌々しく舌打ちした。それを聞いた真弘はドアを閉めて苦笑する。
「逃げたくもなるよ。お前にそんな言い詰められたらさ」
座ろうとはせず、立ったまま夕話を続けた。
「綿貫は頑張ってんじゃねえの。お前の言うこと従順に聞いてさ……今回は初めての頼み事じゃん。まだそれメチャクチャに壊すつもりでいんの」 
「壊すって、何が」
「とぼけんなよ、決まってんだろー? 付き合えた場合の、綿貫と藤平君の関係だよ」
真弘は少し責める目つきでドアにもたれ掛かった。それに対し、夕夏も臆さず答える。
「そりゃあ別れてもらうだろうな。男同士なんて虫唾が走るし」
「あっそ。俺もずっと見過ごしてきたし、今さら止めるつもりはないけど」
わずかな間が空く。再びドアを開けて廊下へ出る際、強い口調で言い放った。 

「あいつを苦しめるだけの結果になったら、そん時はさすがに俺も黙ってないから……覚えとけよ」

部屋の中に沈黙が流れる。夕夏は少し驚いた様な顔を浮かべたが、特に何も言わなかったので一人で生徒会室を出た。
さっきの発言。感情任せに言ってしまったが、やや後悔している。綿貫の味方をして。悪どい夕夏を責めて。それら全ての行動が、「今さら」だから。

夕夏の性格が破綻していることは重々分かっている。けどそれは彼だけのせいじゃなくて、他にキッカケがあったからだ。
二年前、明るくて優しかった彼が日に日におかしくなっていった。それを傍で見ていたから、彼の復讐にも似た異常な行為を止めることができなかった。

男同士は幸せになれないなんて、そんな事はないだろうに。
夕夏は大事な親友。だけど、綿貫だって大事な後輩だ。……どちらかが苦しむ姿なんか見たくない。綿貫も夕夏も、純粋という共通点がある。だから真弘も、綿貫にちょっとした悪戯を仕掛けることがあった。
それはあくまで遊び。可愛い後輩の反応を楽しむためのもの。……だった。それが今はどうだろう。

……。
二人を放っておいたら何かが起きる。そんな予感がして恐ろしい。恋愛は常にベクトルを変えて暴走するから。

綿貫も同じだ。けど無謀だろうと何だろうと、頑張ってる奴の恋愛は応援してやりたかった。





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