人の恋路を邪魔しちゃいけません。

一年生の目標

１５

あれは、今から三ヶ月前のこと。
高校に入学して間もない時だ。

｢ねぇ君、バトミントン部入らないっ？｣
｢良かったら吹奏楽部見学来ませんか？｣
｢あ……すいません、大丈夫です……っ｣

新学期、新入生が歩く桜並木。上級生はいつも校門で待ち構えて、部活の勧誘に必死だった。
俺も本当は、中学でやってたテニス部を覗いてみたかった。だけど超絶チキンのため、中々その一歩を踏み出せない。もう高校生なのに、高校生が怖くて仕方なかった。
｢おい、今の子すごい小さくね？｣
｢……な。小学生みたい｣
彼らと横切る度に嫌でも耳に入る声。高校の新しい制服もいまだに違和感がある。
正直これからやってけるのか不安でいっぱいだったんだ。でも。

｢部活、興味ない？｣

やっぱり、ある日の朝のこと。校門をくぐり抜けて、上級生の壁を脱出した俺の前に知らない先輩が立っていた。
｢あの……？｣
軽く道を塞がれてる気がする。知らない先輩にそんな事をされてるのがフツーに怖かった。
でも彼はお構いなしに、笑顔を浮かべて距離を詰めてくる。
｢俺、毎朝屋上から全生徒を見てるんだ｣
｢……はぁ｣
何だこの人。毎朝って、何の為に。
訊きたいけど、でもやっぱり怖くて訊けない。
｢で、部活は興味ない？ 青春だよ？ まー俺は帰宅部だけど｣
頭の中はハテナでいっぱいだった。ますます分かんないぞ。何で帰宅部なのに部活の勧誘してるんだ。
｢あのねぇ、入部の締め切り今日までだよ。もちろん途中入部も出来るけど、入りたい所あるならちゃんと行っときな。なんなら一緒に行ってあげるし｣
彼は、何故か入部届けを一枚くれた。

｢あの……何で俺に｣
｢ん？ いつも気まずそうに下向いて来てるから｣
｢……っ！｣

それは、すごい恥ずかしかった。薄々わかってたけど、それを見透かされ、直接言われるのは……。
でも彼はどうでもよさげに話を戻した。
｢部活は良いよ。何部に興味ある？｣
｢あ、えっと。……テニス部が｣
｢あぁ…………ＯＫ、放課後体育館前で待ち合わせ。気に入らなかったから入んなくていいから、見学だけ一緒にしようか｣
｢あ、……えっ？｣
｢じゃあねー｣
こっちの意見も聞かずに、謎の先輩は風のように俺の前から去ってしまった。