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一年生の目標
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しおりを挟む「イジめるなんて人聞きの悪い。俺はヘタレた綿貫を教育してやってんだよ」
終わってなかった。
先輩はムカついた出来事は結構根に持つ。ので、俺も智紀さんもほとほと疲れてきていた。
「俺は意味のある事しかしない。全部愛のムチだよ。獅子は子を崖から突き落として、這い上がってきたところを再び突き落とす。それを幾度と繰り返して一人前に育て上げるんだ」
「アホ、突き落とすのは一回だけだろ。お前のやり方は間違ってる」
「いーや俺の教育方針は間違ってない」
メチャクチャ平行線。お互い一歩も譲らないから、話が終わりそうになかった。……けど。
「間違ってるよ。その証拠に綿貫君はお前のこと怖がってんじゃん」
「そんなワケ……」
夕夏は一拍置いて綿貫の方を見た。
実際、すでに疲労困憊の彼の眼は、誰から見ても怯えた子犬の様だった。
「ほら、分かっただろ。お前のスパルタ教育には誰もついてけないんだよ。自分が正しいと思い込んでるワンマン君はそろそろ卒業しろ、マジで。痛いぞ」
「い、いや、俺は……」
否定しようとしていたが、夕夏は青ざめて上手く口が回らないでいた。しどろもどろになって目を泳がす。
「よーし、帰ろうか綿貫君」
「えっ」
確実にショックを受けて落ち込んでいる先輩を無視し、須賀先輩は俺の手を引いた。
「あのう、いいんですか? 七瀬先輩置いてっちゃって……」
「いいよー。あいつは自己中だから、たまにはキツく言っとかないとね」
生徒会室を後にし、見事に七瀬先輩を置き去りにする。俺達は夕焼け色に染まった廊下を歩いた。
「あの……須賀先輩は、七瀬先輩に何でも言えるんですね。すごいです」
俺は普通に報復が怖い。歳の差のせいだろうか。けど、彼は笑って首を横に振った。
「全然。それに分かりやすいじゃん、あいつ」
分かりやすい? 先輩が?
そんな事ないから、みんな七瀬先輩に苦労してると思うんだけど。
やっぱり須賀先輩は不思議な人だな。
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