人の恋路を邪魔しちゃいけません。

七賀ごふん

文字の大きさ
上 下
112 / 142
生徒会長の決心(苦心)

15

しおりを挟む


夕夏の笑顔を見ると、無条件に顔が熱くなる。自分はもしかしたらこの笑顔を見るためにここへ引っ越してきたのかもしれない。意味不明だけど、本気でそう思えるほど胸が高鳴っていた。

「やっぱり、お前は笑ってんのがいいよ。楽しそうに笑ってるとすげー可愛いし、それに何か……俺も嬉しい」
恋人というより、この感覚は家族に近い。
「またお泊まりデートしよ‎ー」
「あぁ」
夕夏は頬を赤らめながら顔を逸らした。そういえば、この照れたときの反応も見慣れた。今は苦笑して終わりだし……。
でも俺達の場合、それも充分すごいことなんだよな。
「夕夏。これから受験もあるし、会える時間もかなり減ると思う。ちょっとの間寂しい想いさせるかもしれないけど、我慢してくれよ」
「わかってるって。つーか、それは俺の台詞だろ」
「ん? ……わっ!」
持っていたフォークがテーブルに置かれる。
勢いよく立ち上がって、夕夏は俺に抱き着いてきた。
「ちょっと、夕夏?」
体重を全部預けられて、ちょっとだけ苦しくなる。もちろん嬉しいけど、急にどうしたんだろう。
「おーい……?」
「充電してんだよ。お前と会えない時間が増えても平気なように、今のうちに抱いておく」
「ははっ、そりゃ名案! 俺も抱いておこっと」
かなり変な構図だと思ったけど、俺は夕夏と抱き合った(※変なところは触ってない)。
……今日はとうとう彼と繋がることができたけど。やっぱり、それが全てじゃないんだ。指先が触れるだけでも満足する。目が合うだけでドキッとする。今は同じ空間で、同じ空気を吸ってるだけで幸せだった。

「大丈夫だよ。夕夏は変わったから……これからは、誰とでも仲良くなれる」
「……うん」

彼の頭を撫でて、細い肩を抱き締めた。その肩は何故か少し震えていて、思わず距離をとる。彼が今どんな表情でいるのか分からなくて不安になった。
「夕夏、どうした?」
その不安は的中していた。夕夏は眼に涙を溜めて俯いている。

「ごめん。嬉しいだけ……智紀に逢えて本当に良かった。今が楽しくて、幸せ過ぎて辛いんだ」
「お前……」

俺と一緒じゃんか。でも彼は意外と涙腺が弱い。余裕に構えられる分、俺の方が得だ。ベッドの中でも何でも、やっぱし俺が上。

「これからもっと幸せにしてやる。だから覚悟しろよ、夕夏」





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

「誕生日前日に世界が始まる」

悠里
BL
真也×凌 大学生(中学からの親友です) 凌の誕生日前日23時過ぎからのお話です(^^ ほっこり読んでいただけたら♡ 幸せな誕生日を想像して頂けたらいいなと思います♡ →書きたくなって番外編に少し続けました。

「恋みたい」

悠里
BL
親友の二人が、相手の事が好きすぎるまま、父の転勤で離れて。 離れても親友のまま、連絡をとりあって、一年。 恋みたい、と気付くのは……? 桜の雰囲気とともにお楽しみ頂けたら🌸

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』 高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。 その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。 そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

デコボコな僕ら

天渡清華
BL
スター文具入社2年目の宮本樹は、小柄・顔に自信がない・交際経験なしでコンプレックスだらけ。高身長・イケメン・実家がセレブ(?)でその上優しい同期の大沼清文に内定式で一目惚れしたが、コンプレックスゆえに仲のいい同期以上になれずにいた。 そんな2人がグズグズしながらもくっつくまでのお話です。

sugar sugar honey! 甘くとろける恋をしよう

乃木のき
BL
母親の再婚によってあまーい名前になってしまった「佐藤蜜」は入学式の日、担任に「おいしそうだね」と言われてしまった。 周防獅子という負けず劣らずの名前を持つ担任は、ガタイに似合わず甘党でおっとりしていて、そばにいると心地がいい。 初恋もまだな蜜だけど周防と初めての経験を通して恋を知っていく。 (これが恋っていうものなのか?) 人を好きになる苦しさを知った時、蜜は大人の階段を上り始める。 ピュアな男子高生と先生の甘々ラブストーリー。 ※エブリスタにて『sugar sugar honey』のタイトルで掲載されていた作品です。

いとしの生徒会長さま

もりひろ
BL
大好きな親友と楽しい高校生活を送るため、急きょアメリカから帰国した俺だけど、編入した学園は、とんでもなく変わっていた……! しかも、生徒会長になれとか言われるし。冗談じゃねえっつの!

【完結】はじめてできた友だちは、好きな人でした

月音真琴
BL
完結しました。ピュアな高校の同級生同士。友達以上恋人未満な関係。 人付き合いが苦手な仲谷皇祐(なかたにこうすけ)は、誰かといるよりも一人でいる方が楽だった。 高校に入学後もそれは同じだったが、購買部の限定パンを巡ってクラスメートの一人小此木敦貴(おこのぎあつき)に懐かれてしまう。 一人でいたいのに、強引に誘われて敦貴と共に過ごすようになっていく。 はじめての友だちと過ごす日々は楽しいもので、だけどつまらない自分が敦貴を独占していることに申し訳なくて。それでも敦貴は友だちとして一緒にいてくれることを選んでくれた。 次第に皇祐は嬉しい気持ちとは別に違う感情が生まれていき…。 ――僕は、敦貴が好きなんだ。 自分の気持ちに気づいた皇祐が選んだ道とは。 エブリスタ様にも掲載しています(完結済) エブリスタ様にてトレンドランキング BLジャンル・日間90位 ◆「第12回BL小説大賞」に参加しています。 応援していただけたら嬉しいです。よろしくお願いします。 ピュアな二人が大人になってからのお話も連載はじめました。よかったらこちらもどうぞ。 『迷いと絆~友情か恋愛か、親友との揺れる恋物語~』 https://www.alphapolis.co.jp/novel/416124410/923802748

モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)

夏目碧央
BL
 兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。  ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?

処理中です...