人の恋路を邪魔しちゃいけません。

七賀ごふん

文字の大きさ
上 下
101 / 142
生徒会長の決心(苦心)

しおりを挟む


最後のセリフは元気に言わなくてもいいと思ったけど、智紀はまたにこにこし始めてる。
「あと、俺の初めての恋人はお前だからな。さ、次はお前が自己紹介して」
「俺は何も言うことない」
「だめだめ、順番だから」
そうは言うけど、自己紹介なんて一番苦手だ。しかも今さらすぎる。彼が知らないことって何だ?
「俺は……」
いや、まぁまぁあるか。
「……八月二十四日生まれ、乙女座。血液型はAB。好きな食べ物は肉全般で、趣味じゃないけど料理は毎日してる。母親がいないから」
智紀どころか、高校に入ってから誰にも話したことない。でも、彼には知っていてほしい。本当は隠しておきたいところも。
「でも代わりに、弟に甘いもの作ること多かったから。多分、お前にも作ってやれるよ」
「マジで!? それは是非お願いします!! お前が作った菓子とか食いたい!」
「分かった分かった」
やっぱり子どもみたいな彼に笑いを堪えられない。嫌でも癒される、そんな存在だ。
「好きになった奴は結構いるかも。でも触りたいって思ったのは……智紀が初めてだ」
「さわ……」
言ってる意味が伝わったのか、智紀はやや頬を赤らめる。そして腰を浮かし、隣に寄り添ってきた。

「……俺も、お前が初めて。触ってもいい?」

ほとんど触れそうな位置に彼の手が。
息が当たる位置に、彼の唇がある。
触ってもいい、なんて愚問だ。────触ってほしい。

「ん……っ」

返事は言葉ではなく、彼の口を塞ぐことで応えた。
家に親がいないからって、こんなことはしちゃいけない。分かってるけど、身体は言うことを聞かなかった。
彼の膝の上にまたがり、熱くて柔らかい舌に必死に食らいつく。
何分そうしてたか分からない。智紀は何も言わず、優しい手つきで抱き寄せてくれた。
最後の良識も吹っ飛びそうだ。溶かされそうに、熱い。

「夕夏、大丈夫か? 無理すんなよ……」

心配そうに見上げる彼に、もっと触れたい。繋がりたくて、シャツのボタンに手をかけた。その手はわずかに震えてしまっている。
引かれないかな。笑われないかな。拒絶されないかな。

怖くてしょうがない……。

「智紀」
「うん?」
「今日……帰りたくない」

怖いのに、さらっと言ってしまった。
顔から火が出そうだ。今この部屋の気温はやばいんじゃないかって、非常にどうでもいいことを考えた。





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ポンコツアルファを拾いました。

おもちDX
BL
オメガのほうが優秀な世界。会社を立ち上げたばかりの渚は、しくしく泣いているアルファを拾った。すぐにラットを起こす梨杜は、社員に馬鹿にされながらも渚のそばで一生懸命働く。渚はそんな梨杜が可愛くなってきて…… ポンコツアルファをエリートオメガがヨシヨシする話です。 オメガバースのアルファが『優秀』という部分を、オメガにあげたい!と思いついた世界観。 ※特殊設定の現代オメガバースです

「恋みたい」

悠里
BL
親友の二人が、相手の事が好きすぎるまま、父の転勤で離れて。 離れても親友のまま、連絡をとりあって、一年。 恋みたい、と気付くのは……? 桜の雰囲気とともにお楽しみ頂けたら🌸

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』 高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。 その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。 そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

「誕生日前日に世界が始まる」

悠里
BL
真也×凌 大学生(中学からの親友です) 凌の誕生日前日23時過ぎからのお話です(^^ ほっこり読んでいただけたら♡ 幸せな誕生日を想像して頂けたらいいなと思います♡ →書きたくなって番外編に少し続けました。

いとしの生徒会長さま

もりひろ
BL
大好きな親友と楽しい高校生活を送るため、急きょアメリカから帰国した俺だけど、編入した学園は、とんでもなく変わっていた……! しかも、生徒会長になれとか言われるし。冗談じゃねえっつの!

【完結】相談する相手を、間違えました

ryon*
BL
長い間片想いしていた幼なじみの結婚を知らされ、30歳の誕生日前日に失恋した大晴。 自棄になり訪れた結婚相談所で、高校時代の同級生にして学内のカースト最上位に君臨していた男、早乙女 遼河と再会して・・・ *** 執着系美形攻めに、あっさりカラダから堕とされる自称平凡地味陰キャ受けを書きたかった。 ただ、それだけです。 *** 他サイトにも、掲載しています。 てんぱる1様の、フリー素材を表紙にお借りしています。 *** エブリスタで2022/5/6~5/11、BLトレンドランキング1位を獲得しました。 ありがとうございました。 *** 閲覧への感謝の気持ちをこめて、5/8 遼河視点のSSを追加しました。 ちょっと闇深い感じですが、楽しんで頂けたら幸いです(*´ω`*) *** 2022/5/14 エブリスタで保存したデータが飛ぶという不具合が出ているみたいで、ちょっとこわいのであちらに置いていたSSを念のためこちらにも転載しておきます。

王様のナミダ

白雨あめ
BL
全寮制男子高校、箱夢学園。 そこで風紀副委員長を努める桜庭篠は、ある夜久しぶりの夢をみた。 端正に整った顔を歪め、大粒の涙を流す綺麗な男。俺様生徒会長が泣いていたのだ。 驚くまもなく、学園に転入してくる王道転校生。彼のはた迷惑な行動から、俺様会長と風紀副委員長の距離は近づいていく。 ※会長受けです。 駄文でも大丈夫と言ってくれる方、楽しんでいただけたら嬉しいです。

思い出して欲しい二人

春色悠
BL
 喫茶店でアルバイトをしている鷹木翠(たかぎ みどり)。ある日、喫茶店に初恋の人、白河朱鳥(しらかわ あすか)が女性を伴って入ってきた。しかも朱鳥は翠の事を覚えていない様で、幼い頃の約束をずっと覚えていた翠はショックを受ける。  そして恋心を忘れようと努力するが、昔と変わったのに変わっていない朱鳥に寧ろ、どんどん惚れてしまう。  一方朱鳥は、バッチリと翠の事を覚えていた。まさか取引先との昼食を食べに行った先で、再会すると思わず、緩む頬を引き締めて翠にかっこいい所を見せようと頑張ったが、翠は朱鳥の事を覚えていない様。それでも全く愛が冷めず、今度は本当に結婚するために翠を落としにかかる。  そんな二人の、もだもだ、じれったい、さっさとくっつけ!と、言いたくなるようなラブロマンス。

処理中です...