99 / 142
生徒会長の決心(苦心)
2
しおりを挟む真弘は閃いたと言わんばかりに、得意げに微笑む。遊園地とか水族館とか、定番の場所で良いからデートをするよう薦めてきた。
「恋人なら学校なんかじゃなくて色んな所に行かなきゃな。そこでしか交わせない話や、出せない雰囲気があるんだから」
「ふうん」
なるほど。確かにシチュエーションは大事だ。
マンネリに不安があるわけじゃないけど、新しいステップに踏み出すのは悪くない。真弘のアドバイスを受け、翌日の放課後に智紀を呼び出した。
「智紀、行きたいところないか? デートしよう」
「デートォ!? 嬉しいけどお前はいつも唐突だな!」
すっかり人がいなくなった教室で、智紀は驚きの声を上げた。
「でも今からだと……遠いところは考えちゃうな。夜になっても楽しいところ。どこだろ」
「明日は土曜日だし、俺は何時でも平気だよ。お前が可能な時間まで」
智紀は真剣に悩んでいる。その姿を見るのも面白くて、しばらく黙っていた。
けど彼は何か思いついたのか、笑顔で指を鳴らす。
「決めたぞ、夕夏! 今日のデートスポット!」
「……どこ?」
正直なことを言うと、俺はどこでもよかった。彼と居られるならどこでも。
────そう。“ここ”以外は。
「お、……お邪魔します」
「おう。入って入って」
三十分後、やって来たのは智紀の家。カップルが溢れる華やかな場所じゃない。だが、これはこれで変に気が張った。
「ちょうど良かった。実はさ、今日親帰って来ないんだよ。結婚記念日だから三つ星ホテルに泊まって楽しむんだって」
「何、そうだったんだ」
「そう。あ、だからもし平気なら泊まってくれてもいいぜ」
キッチンへ向かう。智紀は俺に笑いかけた後、飲み物の用意を始めた。
その端で、彼の言葉を反芻する。
智紀の家に泊まる……!?
どうしよう。それはもちろん、めちゃくちゃ泊まりたい。
でも今日は何も持ってきてないし、準備不足にも程がある。どうせなら最高のコンディション(?)で臨みたいし、智紀だって実際いきなり泊まられたら迷惑かもしれない。
でも泊まりたい。何コレどうしたらいいんだ────!
「よーし、俺が開発したレモンとシナモンとホワイトチョコ入り特製ココアの出来上がり。さ、俺の部屋に行こう」
「あ、あぁ」
心の中はかつてない葛藤で荒れ狂ってる。しかしそれを悟られないよう、真顔を保って彼についていった。
0
お気に入りに追加
133
あなたにおすすめの小説
「誕生日前日に世界が始まる」
悠里
BL
真也×凌 大学生(中学からの親友です)
凌の誕生日前日23時過ぎからのお話です(^^
ほっこり読んでいただけたら♡
幸せな誕生日を想像して頂けたらいいなと思います♡
→書きたくなって番外編に少し続けました。

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】
彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』
高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。
その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。
そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

侯爵令息セドリックの憂鬱な日
めちゅう
BL
第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける———
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。
sugar sugar honey! 甘くとろける恋をしよう
乃木のき
BL
母親の再婚によってあまーい名前になってしまった「佐藤蜜」は入学式の日、担任に「おいしそうだね」と言われてしまった。
周防獅子という負けず劣らずの名前を持つ担任は、ガタイに似合わず甘党でおっとりしていて、そばにいると心地がいい。
初恋もまだな蜜だけど周防と初めての経験を通して恋を知っていく。
(これが恋っていうものなのか?)
人を好きになる苦しさを知った時、蜜は大人の階段を上り始める。
ピュアな男子高生と先生の甘々ラブストーリー。
※エブリスタにて『sugar sugar honey』のタイトルで掲載されていた作品です。
いとしの生徒会長さま
もりひろ
BL
大好きな親友と楽しい高校生活を送るため、急きょアメリカから帰国した俺だけど、編入した学園は、とんでもなく変わっていた……!
しかも、生徒会長になれとか言われるし。冗談じゃねえっつの!
【完結】はじめてできた友だちは、好きな人でした
月音真琴
BL
完結しました。ピュアな高校の同級生同士。友達以上恋人未満な関係。
人付き合いが苦手な仲谷皇祐(なかたにこうすけ)は、誰かといるよりも一人でいる方が楽だった。
高校に入学後もそれは同じだったが、購買部の限定パンを巡ってクラスメートの一人小此木敦貴(おこのぎあつき)に懐かれてしまう。
一人でいたいのに、強引に誘われて敦貴と共に過ごすようになっていく。
はじめての友だちと過ごす日々は楽しいもので、だけどつまらない自分が敦貴を独占していることに申し訳なくて。それでも敦貴は友だちとして一緒にいてくれることを選んでくれた。
次第に皇祐は嬉しい気持ちとは別に違う感情が生まれていき…。
――僕は、敦貴が好きなんだ。
自分の気持ちに気づいた皇祐が選んだ道とは。
エブリスタ様にも掲載しています(完結済)
エブリスタ様にてトレンドランキング BLジャンル・日間90位
◆「第12回BL小説大賞」に参加しています。
応援していただけたら嬉しいです。よろしくお願いします。
ピュアな二人が大人になってからのお話も連載はじめました。よかったらこちらもどうぞ。
『迷いと絆~友情か恋愛か、親友との揺れる恋物語~』
https://www.alphapolis.co.jp/novel/416124410/923802748

モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)
夏目碧央
BL
兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。
ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる