57 / 142
転校生の不敵
2
しおりを挟むひたすら廊下を歩いていた。だが校舎の端、終わりがきてしまった。屋外に出たので、誰もいない裏庭の方を見渡す。
もちろん目的地はここじゃなくて、保健室だ。けど俺は保健室の場所なんか知らない。そんなこと、俺も夕夏もとっくの昔に気付いていた。
ただ止まりたくなかっただけ。
お互い気付かないふりをした。
「男が好き……か」
夕夏は長い時間を置いて、決して明るくない声で呟く。
「で、それが何で俺にしかできない相談なんだ?」
「……うん」
それに応えるのはかなりの勇気が必要で、迷いまくった。けど外の空気を吸って、まず自分を落ち着かせた。
それで後は、思った事をそのまま言う。行動あるのみ、というか……。彼に初めて会った時からそうしてきたように、ただ想いを紡いだ。
「お前が好きなんだ。男が好きかもしれないとか、それはホントはどうでもよくって、単純にお前が好き。……だからすげー困ってるんだよ! 朝も夜もお前のことばっか考えて、テスト勉強もままならないし!」
流れる、暫しの沈黙。
それを打ち消して聞こえてきた夕夏の声は、期待を裏切らない冷たさだった。
「最後のは絶対当て付けだし。真顔でそんなこと言って恥ずかしくねえの?」
「恥ずかしい!」
夕夏の問い掛けに即答した。じゃ言うなよ。って顔をしてるけど、そこは察してほしい。
「その、恥ずかしいけど……気持ち悪いって思われる方が怖いよ。それでも告白した俺の勇気を評価してくれない?」
「何で急に上から目線?」
正論という名のツッコミを受ける。聞こえないフリをしてると、夕夏はまた動き始めた。
「もう平気。降ろせ」
どうしようか迷ったけど、だいぶ顔色は良くなっていたからお姫様抱っこはやめた。彼が微妙な段差に座ったので、とりあえず隣に座る。
「……そうだ、告白するのに勇気なんていらない場合があったな。真っ赤な嘘な。冗談の場合」
夕夏は思いついた様にポンと手を叩いて笑った。
でもこっちは笑えない。むしろ憤りすら覚えた。
「オイオイ……まだ俺が冗談で言ってると思ってんの?」
「さぁ……。怒んなよ。そういう場合もあるってこと」
そう言われても胸に引っ掛かる。茶化してると思われてるのか。
確かに、ゲイ嫌いだから仕方ないかもしれないけど。俺も自分が男を好きになるなんて思わなかったから。
0
お気に入りに追加
133
あなたにおすすめの小説
「誕生日前日に世界が始まる」
悠里
BL
真也×凌 大学生(中学からの親友です)
凌の誕生日前日23時過ぎからのお話です(^^
ほっこり読んでいただけたら♡
幸せな誕生日を想像して頂けたらいいなと思います♡
→書きたくなって番外編に少し続けました。

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】
彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』
高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。
その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。
そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

侯爵令息セドリックの憂鬱な日
めちゅう
BL
第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける———
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。
sugar sugar honey! 甘くとろける恋をしよう
乃木のき
BL
母親の再婚によってあまーい名前になってしまった「佐藤蜜」は入学式の日、担任に「おいしそうだね」と言われてしまった。
周防獅子という負けず劣らずの名前を持つ担任は、ガタイに似合わず甘党でおっとりしていて、そばにいると心地がいい。
初恋もまだな蜜だけど周防と初めての経験を通して恋を知っていく。
(これが恋っていうものなのか?)
人を好きになる苦しさを知った時、蜜は大人の階段を上り始める。
ピュアな男子高生と先生の甘々ラブストーリー。
※エブリスタにて『sugar sugar honey』のタイトルで掲載されていた作品です。
いとしの生徒会長さま
もりひろ
BL
大好きな親友と楽しい高校生活を送るため、急きょアメリカから帰国した俺だけど、編入した学園は、とんでもなく変わっていた……!
しかも、生徒会長になれとか言われるし。冗談じゃねえっつの!
【完結】はじめてできた友だちは、好きな人でした
月音真琴
BL
完結しました。ピュアな高校の同級生同士。友達以上恋人未満な関係。
人付き合いが苦手な仲谷皇祐(なかたにこうすけ)は、誰かといるよりも一人でいる方が楽だった。
高校に入学後もそれは同じだったが、購買部の限定パンを巡ってクラスメートの一人小此木敦貴(おこのぎあつき)に懐かれてしまう。
一人でいたいのに、強引に誘われて敦貴と共に過ごすようになっていく。
はじめての友だちと過ごす日々は楽しいもので、だけどつまらない自分が敦貴を独占していることに申し訳なくて。それでも敦貴は友だちとして一緒にいてくれることを選んでくれた。
次第に皇祐は嬉しい気持ちとは別に違う感情が生まれていき…。
――僕は、敦貴が好きなんだ。
自分の気持ちに気づいた皇祐が選んだ道とは。
エブリスタ様にも掲載しています(完結済)
エブリスタ様にてトレンドランキング BLジャンル・日間90位
◆「第12回BL小説大賞」に参加しています。
応援していただけたら嬉しいです。よろしくお願いします。
ピュアな二人が大人になってからのお話も連載はじめました。よかったらこちらもどうぞ。
『迷いと絆~友情か恋愛か、親友との揺れる恋物語~』
https://www.alphapolis.co.jp/novel/416124410/923802748

モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)
夏目碧央
BL
兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。
ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる