40 / 142
生徒会長の報告(脅迫)
7
しおりを挟む……危なかった。真弘達には絶対気付かれたくなかったから否定したけど。
間違いない。今自分は確実に、“彼”に振り回されている。
「夕夏ー、お願い! この数式まったく分からんから教えて!」
子どものような笑顔を浮かべ、智紀がやってきた。そう、彼がその張本人。中間テストを来週に控え、ノートと教科書を翳している。
「……俺これ昨日教えなかったっけ」
最近の三年生の話題は、もっぱらテストだ。受験を前に、いつも遊んでるクラスメイトも皆血眼になって勉強している。
その中で唯一、こいつだけがニコニコしていた。
「うーん、確かに教えてもらったんだけどね。ゴメン、忘れちゃった……」
あんだけ懇切丁寧に教えてやったのに、このクソ……。でも、しょうがないか。乗りかかった船だし、最後まで見よう。そう思って立ち上がると、智紀の隣に顔を覗かせる奴がいた。
「ねぇ、俺で良かったら見ようか?」
声の主は、クラスメイトの弥栄だった。下の名前は……くそ、おかしいな。知らない。
急に話に割り込んできたことに驚いたけど、それよりも驚いたのは、
「ほんとに!? わー、ありがとう、お願いします!!」
「OK、じゃ今からちょっと残って勉強しよっか」
智紀が、弥栄の声掛けに二つ返事で大喜びしたことだ。弥栄も、智紀の返事を聴いて嬉しそうに自分の席に戻って行った。何だ? 何かムカつく……けど、俺は何にムカついてるんだ。
「はぁー、なんて良い人なんだろ! 名前、弥栄だよね? 前から喋ってみたかったんだ! イケメンで優しいとか反則だよ!」
智紀はガキみたいにきゃっきゃとはしゃいでる。それがまた、胸のモヤモヤを倍増させた。
「ハッ、騙されんなよ。あんなのどうせ貸しを作っときたいだけだぜ。俺の方が成績上だし、見返りを求めないって意味でも俺のが勝ってるね」
良くないと思ったけど、口からは嫌味しか出てこない。止まりたくても止まれない、皮肉のアクセルを踏んでしまっている。
当然ながら、それを聴いた智紀は憐れみの目で俺を見てきた。
「……残念だけど、そういう卑屈な考えしてる時点でお前の負けだよ。その証拠に、人望的にも弥栄の方が勝ってるだろ? お前俺以外に友達いないし」
空いた口が塞がらない。心臓をフォークで突き刺されたような感覚だった。
理由はひとつ。彼の言う通り、……図星だからだ。
俺は、友達がいない。
0
お気に入りに追加
131
あなたにおすすめの小説
どうしようもなく甘い一日
佐治尚実
BL
「今日、彼に別れを告げます」
恋人の上司が結婚するという噂話を聞いた。宏也は身を引こうと彼をラブホテルに誘い出す。
上司×部下のリーマンラブです。
今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。
理香は俺のカノジョじゃねえ
中屋沙鳥
BL
篠原亮は料理が得意な高校3年生。受験生なのに卒業後に兄の周と結婚する予定の遠山理香に料理を教えてやらなければならなくなった。弁当を作ってやったり一緒に帰ったり…理香が18歳になるまではなぜか兄のカノジョだということはみんなに内緒にしなければならない。そのため友だちでイケメンの櫻井和樹やチャラ男の大宮司から亮が理香と付き合ってるんじゃないかと疑われてしまうことに。そうこうしているうちに和樹の様子がおかしくなって?口の悪い高校生男子の学生ライフ/男女CPあります。
ハイスペックED~元凶の貧乏大学生と同居生活~
みきち@書籍発売中!
BL
イケメン投資家(24)が、学生時代に初恋拗らせてEDになり、元凶の貧乏大学生(19)と同居する話。
成り行きで添い寝してたらとんでも関係になっちゃう、コメディ風+お料理要素あり♪
イケメン投資家(高見)×貧乏大学生(主人公:凛)
【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】
彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』
高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。
その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。
そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?
好きなあいつの嫉妬がすごい
カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。
ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。
教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。
「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」
ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる