30 / 142
生徒会長の奉仕(監視)
19
しおりを挟む多分いつもそうだ。こうして本音で言い合えてる時は、彼は楽しそうに見える。慣れてくると段々面白い。可愛い奴なのかも。
そうだ!
「なぁ、七瀬って下の名前何て言うの?」
「名簿で探せば?」
何で素直に答えられないんだか。でも、彼の名前を知らなかった自分に驚きだ。今まで気にしたこともなかったもんな。
「もう、俺は最初に教えたじゃん。まさか七瀬って苗字じゃないの? 名前でした?」
「っんなわけねーだろ! 七瀬……夕夏だよ。これで満足?」
彼はやっと立ち止まって、目を合わせてくれた。
「ゆうか……って言うの? 女みて……じゃなくて、可愛い……じゃなくて、えーっと……綺麗でもなくて」
「フォローしようとすんな。無駄にムカつく」
彼の目力はやばい。睨まれたら思わず視線を外したくなる。それはそうと、まずいぞ。また怒らせたみたいだ。
「ごめんごめん。めっちゃ良い名前だと思う。これからは下の名前で呼ぶよ!」
「ノーサンキュー。呼んだら殺すぞ」
「まぁまぁ、照れんなって! 夕夏はこれからどうすんだ? 帰るの?」
「呼ぶなっつってんだろうが。アンタの退部届け出したら帰るよ」
夕夏は手に持っていたファイルの中から、何故か俺の名前が綴られた退部届けを取り出した。何でそんな用意が良いんだよ。つうかそれは他人が渡して良いのか。
「でも、いいのかな。不田澤はともかく、歓迎してくれた部活の皆に悪い気がする」
「あぁ、そう? 掘られたいなら止めないけど。俺はあくまで罪悪感で動いただけだから」
「掘られたくはない。顧問の先生にも申し訳ないけど、……そうするか」
彼から退部届けを受け取り、ため息をもらす。でもこいつ、そこまで考えてくれてたのか。
一応は俺の為と思って部活を紹介して……だから本当は、こいつが悪いわけじゃないのに。
かといってゲイの部長が悪いわけでもないんだ。
同性が好きとか、それは生まれつき備わったホニャララで、彼を責める理由にはならない。
「恋愛って難しいな……」
思わず、ボソッと呟いてしまった。
「ばーか。ハナから恋愛なんてするからいけないんだよ」
「そんなこと言ったって、好きになっちゃうのはしょうがないだろ」
彼の辛辣な言葉に思わず言い返す。これは何かの受け売りかもしれないけど、やっぱり信じたい。
「誰かを好きになんのは、絶対に悪いことじゃないよ」
0
お気に入りに追加
130
あなたにおすすめの小説
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)
夏目碧央
BL
兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。
ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?
実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは
竹井ゴールド
ライト文芸
日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。
その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。
青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。
その後がよろしくない。
青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。
妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。
長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。
次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。
三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。
四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。
この5人とも青夜は家族となり、
・・・何これ? 少し想定外なんだけど。
【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】
【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】
【2023/6/5、お気に入り数2130突破】
【アルファポリスのみの投稿です】
【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】
【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】
【未完】
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
目が覚めたら囲まれてました
るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。
燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。
そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。
チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。
不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で!
独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。
理香は俺のカノジョじゃねえ
中屋沙鳥
BL
篠原亮は料理が得意な高校3年生。受験生なのに卒業後に兄の周と結婚する予定の遠山理香に料理を教えてやらなければならなくなった。弁当を作ってやったり一緒に帰ったり…理香が18歳になるまではなぜか兄のカノジョだということはみんなに内緒にしなければならない。そのため友だちでイケメンの櫻井和樹やチャラ男の大宮司から亮が理香と付き合ってるんじゃないかと疑われてしまうことに。そうこうしているうちに和樹の様子がおかしくなって?口の悪い高校生男子の学生ライフ/男女CPあります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる