人の恋路を邪魔しちゃいけません。

七賀ごふん

文字の大きさ
上 下
2 / 142
転校生の初日

しおりを挟む


須賀智紀すがともき君か。編入試験のときは用事があって、立ち会えなくて悪かったね。俺は君がこれから過ごす二組の担任、笠置だ。これから一年よろしく!」

朝の職員室で元気良く挨拶する、これまた若い男の先生。この人に受験とかで色々お世話になるのかな、と考えて教室まで歩いていた矢先。
「オイ。お前、康太に告白したんだって?」
「告白……してたら、どうだって言うんだよ」
ちょっと揉めかけてる二人の男子生徒を見つけた。内容は何というか、恋愛のいざこざっぽいと瞬時に想像できた。

「あいつ、俺と付き合ってんだけど。手ェ出さないでくれる?」

ほあぁ。うんうん、気持ちは分かるよ。
でもそこの彼は多分知らなかったんじゃないかな。康太君とやらに彼氏がいるって知ってたら、告白なんて……。
「……ん?」
ちょっと待て。ここは男子校だから男しかいないはず。 しかも康太って、どう考えても男の名前だから。
「うわあぁぁっ!!」
「ど、どうした!?」
突然絶叫した俺を不思議に思い、笠置先生が駆け寄る。
「お、おおお男が……男を、って……それは……アリなんでしょうか……?」
「な、何? もう一回言って」
「だから男が……!」
って待て待て。そんなこと聞いてどーすんだ。
慌てて我にかえった。転校初日からヤバい奴だと思われるぞ。
見ると、既にさっきの二人はいなかった。ひえぇ……いやいや、いいじゃんか、誰が誰を好きになろうと自由だ。俺には関係ない。と智紀は自分に言い聞かせた。
「すいません、何か大丈夫でした」
「ほんとに大丈夫か? 分からない事があったら何でも聞くんだぞ」
「は……い」
先生の優しい声掛けに頷き、とうとう野郎だらけの教室へ突入した。

「えっと、須賀智紀です。前の学校じゃサッカー部に入ってました。これから一年よろしくお願いします」

適当な自己紹介をすると、拍手された。嬉しいけど恥ずかしい時間だ。転校慣れしてるから緊張はしないけど、こういうとき俺は大抵「ども」って言いながらヘコヘコする。
「じゃあ、早速授業始めるからな」
「えー、いっそ全員自己紹介しませんか! その方が親切でしょ」
「勉強したくないだけだろ! いいから始めるぞ!」
クラスの皆、笑ったりブーブー文句を言ってる。
良かった。朝の喧嘩から不安になってたけど、これなら何だかんだで楽しくやってけそうだ。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

恋愛対象

すずかけあおい
BL
俺は周助が好き。でも周助が好きなのは俺じゃない。 攻めに片想いする受けの話です。ハッピーエンドです。 〔攻め〕周助(しゅうすけ) 〔受け〕理津(りつ)

【完結】嘘はBLの始まり

紫紺
BL
現在売り出し中の若手俳優、三條伊織。 突然のオファーは、話題のBL小説『最初で最後のボーイズラブ』の主演!しかもW主演の相手役は彼がずっと憧れていたイケメン俳優の越前享祐だった! 衝撃のBLドラマと現実が同時進行! 俳優同士、秘密のBLストーリーが始まった♡ ※番外編を追加しました!(1/3)  4話追加しますのでよろしくお願いします。

思い出して欲しい二人

春色悠
BL
 喫茶店でアルバイトをしている鷹木翠(たかぎ みどり)。ある日、喫茶店に初恋の人、白河朱鳥(しらかわ あすか)が女性を伴って入ってきた。しかも朱鳥は翠の事を覚えていない様で、幼い頃の約束をずっと覚えていた翠はショックを受ける。  そして恋心を忘れようと努力するが、昔と変わったのに変わっていない朱鳥に寧ろ、どんどん惚れてしまう。  一方朱鳥は、バッチリと翠の事を覚えていた。まさか取引先との昼食を食べに行った先で、再会すると思わず、緩む頬を引き締めて翠にかっこいい所を見せようと頑張ったが、翠は朱鳥の事を覚えていない様。それでも全く愛が冷めず、今度は本当に結婚するために翠を落としにかかる。  そんな二人の、もだもだ、じれったい、さっさとくっつけ!と、言いたくなるようなラブロマンス。

そんなの真実じゃない

イヌノカニ
BL
引きこもって四年、生きていてもしょうがないと感じた主人公は身の周りの整理し始める。自分の部屋に溢れる幼馴染との思い出を見て、どんなパソコンやスマホよりも自分の事を知っているのは幼馴染だと気付く。どうにかして彼から自分に関する記憶を消したいと思った主人公は偶然見た広告の人を意のままに操れるというお香を手に幼馴染に会いに行くが———? 彼は本当に俺の知っている彼なのだろうか。 ============== 人の証言と記憶の曖昧さをテーマに書いたので、ハッキリとせずに終わります。

「誕生日前日に世界が始まる」

悠里
BL
真也×凌 大学生(中学からの親友です) 凌の誕生日前日23時過ぎからのお話です(^^ ほっこり読んでいただけたら♡ 幸せな誕生日を想像して頂けたらいいなと思います♡ →書きたくなって番外編に少し続けました。

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』 高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。 その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。 そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

「恋みたい」

悠里
BL
親友の二人が、相手の事が好きすぎるまま、父の転勤で離れて。 離れても親友のまま、連絡をとりあって、一年。 恋みたい、と気付くのは……? 桜の雰囲気とともにお楽しみ頂けたら🌸

好きなあいつの嫉妬がすごい

カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。 ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。 教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。 「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」 ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」

処理中です...