人の恋路を邪魔しちゃいけません。

七賀ごふん

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転校生の初日

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須賀智紀すがともき君か。編入試験のときは用事があって、立ち会えなくて悪かったね。俺は君がこれから過ごす二組の担任、笠置だ。これから一年よろしく!」

朝の職員室で元気良く挨拶する、これまた若い男の先生。この人に受験とかで色々お世話になるのかな、と考えて教室まで歩いていた矢先。
「オイ。お前、康太に告白したんだって?」
「告白……してたら、どうだって言うんだよ」
ちょっと揉めかけてる二人の男子生徒を見つけた。内容は何というか、恋愛のいざこざっぽいと瞬時に想像できた。

「あいつ、俺と付き合ってんだけど。手ェ出さないでくれる?」

ほあぁ。うんうん、気持ちは分かるよ。
でもそこの彼は多分知らなかったんじゃないかな。康太君とやらに彼氏がいるって知ってたら、告白なんて……。
「……ん?」
ちょっと待て。ここは男子校だから男しかいないはず。 しかも康太って、どう考えても男の名前だから。
「うわあぁぁっ!!」
「ど、どうした!?」
突然絶叫した俺を不思議に思い、笠置先生が駆け寄る。
「お、おおお男が……男を、って……それは……アリなんでしょうか……?」
「な、何? もう一回言って」
「だから男が……!」
って待て待て。そんなこと聞いてどーすんだ。
慌てて我にかえった。転校初日からヤバい奴だと思われるぞ。
見ると、既にさっきの二人はいなかった。ひえぇ……いやいや、いいじゃんか、誰が誰を好きになろうと自由だ。俺には関係ない。と智紀は自分に言い聞かせた。
「すいません、何か大丈夫でした」
「ほんとに大丈夫か? 分からない事があったら何でも聞くんだぞ」
「は……い」
先生の優しい声掛けに頷き、とうとう野郎だらけの教室へ突入した。

「えっと、須賀智紀です。前の学校じゃサッカー部に入ってました。これから一年よろしくお願いします」

適当な自己紹介をすると、拍手された。嬉しいけど恥ずかしい時間だ。転校慣れしてるから緊張はしないけど、こういうとき俺は大抵「ども」って言いながらヘコヘコする。
「じゃあ、早速授業始めるからな」
「えー、いっそ全員自己紹介しませんか! その方が親切でしょ」
「勉強したくないだけだろ! いいから始めるぞ!」
クラスの皆、笑ったりブーブー文句を言ってる。
良かった。朝の喧嘩から不安になってたけど、これなら何だかんだで楽しくやってけそうだ。



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